鉄道伝説「富山ライトレール ~LRTで地方都市の未来を切り拓け~」を視聴して 

北陸新幹線が開業して1か月が経過した。最近は、石川県金沢市を初めとした石川県の特集がテレビで組まれることが多くなった。金沢市は大好きな街だけれども、ここ富山市も負けてはいない。富山市には何と言ってもライトレールが走っている。富山市を大きく変えたといっても過言ではないライトレールをはじめとした路面電車の整備。平成26年(西暦2014年)12月21日の午後10時00分からオンエアされたBSフジ「鉄道伝説」の内容は、富山市でのライトレールの特集であった。

そもそもライトレールとは、Light Rail Transit (略称はLRT)のことで、1970年代にアメリカで提唱された交通システムで、小型車両で近距離輸送を行うための鉄道である。路線の大部分を専用軌道とし、部分的に道路上を走行することで、鉄道が持つ「定時性と速度」、路面電車が持つ「利便性」という両方の長所を持つ公共交通である。

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日本では、モータリゼーションが進んで都市の郊外化が進み、都市における公共交通の利用が減少していた。しかし、近年は住民の高齢化や中心市街地の空洞化が進んでしまい、今まで以上に公共交通と徒歩で移動可能なコンパクトな街づくりが求められるようになってきた。それにふさわしいものとして、先ほどあげられたLRTが日本でも注目されるようになった。日本でLRTシステムを最初に取り入れたのが先ほどあげた富山県富山市である。

富山市のライトレールは、ゼロから路線を作ったわけではない。廃線の危機を迎えていたJR富山港線と呼ばれる路線を利用したのである。JR富山港線の沿線は、かつては学校や工場などが立ち並び活気があったのだが、モータリゼーションの影響で工場は郊外へ移転し、学校も沿線から移転してしまい、利用者が減少していた。また、北陸本線は交流電化されたために直流の富山港線とは車両の共有が難しく、いよいよ廃線の危機を迎えていた。

そのような中、平成13年(西暦1999年)に北陸新幹線の富山までの延線が決定した。さらに、富山駅の立体高架が決定。しかし、赤字の富山港線には逆風となった。なぜならば、赤字路線のために予算を使って富山港線の富山駅を高架化することは合理的ではないからだ。まさに風前の灯火ともいえる状況であった。

しかしここで富山市長の森雅志氏がコンパクトシティを提唱し、富山港線を生まれ変われようと考えたのだ。バス路線の拡充を考えなかったのは、バスは渋滞を生むからであり、また高齢化が進むことから車の運転ができる人たちが減少することから、コンパクトシティの街づくりには鉄軌道を軸とすべきだと主張したのである。森市長はヨーロッパのLRTを視察する。車一辺倒の社会から公共交通も含めた社会の姿を森市長は見たのである。富山市ではJR富山港線の専用軌道を使うことで渋滞に巻き込まれず、速度と定時性を確保しようと考えた。さらに、都心の従来のJR富山港線のルートを一部変更して新しく軌道を建設。さらに、北部を走る富山港線を既存の富山地方鉄道の富山軌道線(富山駅南部を走る)に乗り入れる(富山駅が高架になることで実現できる)ことで、より利便性を図ろうと考えたのである。また、車両も低床車両を導入することを決定した。

つまり、富山のLRTが作られた背景には、

  1. 公共交通の再整備を掲げる森市長の存在
  2. 存亡が危ぶまれていた富山港線の存在
  3. 北陸新幹線の延線に伴う富山駅の高架化と立体交差化

という偶然があったのである。

こういった方向性が決定し、住民にも説明会を実施。大きな反対運動もなく、第3セクター方式で平成16年4月に富山ライトレール株式会社が設立。富山ライトレールは、旧富山港線区間と路面電車区間の2つの路線を併せ持つため、旧富山港線区間については「鉄道事業法」、路面電車区間については「軌道法」の2つの法律に基づいて事業許可や工事施工を申請。平成17年2月に工事着手。旧富山港線区間は電圧を600Vに降圧し、騒音防止のために樹脂固定軌道を軌道区間全線に導入した。また、路面電車区間については緑化を実施。線路に芝生を敷いたのである。こうした工事が実施される中、平成18年2月28日にJR富山港線ラストラン。その後開業2カ月に迫る中、既存の鉄道区間の工事を急ピッチで実施された。

ライトレールを語る上でデザインの話題を抜きにすることはできない。東京のGKデザイングループと地元の島津グラフィックスによるトータルデザインチームを結成。車両のデザインだけでなく、駅のデザインや広告のデザインなどもトータルで実施。これは富山の街のデザインを創る。ライトレールには車両広告や社内の中吊り広告もない。美観を損なわないためである。一方、広告収入があまり見込めないので、ライトレールに対して市民や企業から支援を受けている。例えば、駅の椅子には寄付した人のネームプレートをメッセージを付けたり、駅の広告スペースには企業広告が入るのではなく、街の広告が入り、企業がそのスペースを買い企業名を小さく入れるスポンサーアートが採用された。

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平成18年4月29日についに開業。TLR0600形が導入された。ポートラムという愛称が付けられた。駅は全てスロープで、バリアフリーに対応。車両と駅との段差もほぼない。利便性を確保するためにライトレールのダイヤに合わせて駅に向けてバスを運行。平日には高齢者の利用が大幅に上昇。富山市民のライフスタイルを変えるに至ったのである。

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