第7回 スペインの国会と日本の国会とはどのような違いがあるのでしょうか?(その2)- 国会の権能編

最終更新日: 平成29年(西暦2017年)9月4日

はじめに

前回今回にわたって、国会 (Cortes Generales)についての日本とスペインの法制度を比較します。

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前回は二院制の意義と国会議員の選出方法について取り上げましたが、今回は国会が果たす役割として大切な法律がつくられるまでのプロセスや国会が持つ権能についての比較をしていこうと思います。

日本の法制度についてもくわしく解説をしました。中学校や高校の公民の授業の復習のような内容ですが、制度比較をする際に手を抜くことは許されないからです。

それでは、はじめましょう。

日本における国会の権能

立法

立法発議権を有する者

日本の場合、立法発議をすることができるのは、以下の2つです。

  • 国会議員(日本国憲法第41条、国会法第56条)
  • 内閣(日本国憲法第72条、内閣法第5条)

国会議員が提出する法案のことを「議員立法」、内閣が提出する法案のことを「閣法(かくほう)」と呼ぶことがあります。

「議員立法」は、憲法第41条「国会は国の最高機関であって、国の唯一の立法機関である」という条文が根拠となっています。しかしながら、国会議員が単独で法案を提出できるわけではなく国会法第56条において、次のような制限がかけられています。

日本の国会における国会議員による法案提出のハードル

よく「議員立法」の数が「閣法」と比較すると著しく少ないという指摘がされることがあります。論より証拠で、平成28年度のデータを内閣法制局のウェブサイトから引用します。

区分/国会会期 内閣提出法律案 議員立法
提出件数 成立件数 提出件数 成立件数 提出件数 成立件数
第192回(臨時会)
(平成28.9.26~12.17)
(11)
19
(6)
18
(54)
126
(4)
13
(65)
145
(10)
31
第191回(臨時会)
(平成28.8.1~8.3)
(11)
0
(0)
0
(54)
0
(0)
0
(65)
0
(0)
0
第190回(常会)
(平成28.1.4~6.1)
(9)
56
(4)
50
(28)
72
(2)
18
(37)
128
(6)
68

(注)上段括弧書きは、継続審査に付されていた法律案の件数(外数)

議員立法も多く提出されてることが分かります。しかし成立件数が少ないのが特徴です。おそらく野党が議案を提出していて多数派の与党が否決しているためにこのような結果になるものだと推察されます。

法律成立のための決議要件

「法律」はどのように成立するでしょうか。

まず、衆議院でも参議院でもどちらから審議を始めても構いません。多くは衆議院から審議されることが多いですが、衆議院から審議を開始しなければならないわけではありません。

法案は議長に提出され、その後委員会で少数の議員により法案審議(審査)を行います。委員会を開くには委員の半数以上の出席が必要で、議事は出席委員の過半数の賛成で決せられます。

日本における法律の成立までの流れ

委員会で可決されると、次は議員全員が出席する本会議で法案に対する議決を行います。

本会議の議決については、憲法第56条に書いてある通りです。

<日本国憲法第56条>

  1. 両議院は、各々その総議員の三分の一以上の出席がなければ、議事を開き議決することができない。
  2. 両議院の議事は、この憲法に特別の定のある場合を除いては、出席議員の過半数でこれを決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。

衆議院と参議院とで可決すると法律は成立し、天皇により公布されます。

衆議院と参議院が異なる議決をした場合はどのような対応を取るのでしょうか。この点については、日本国憲法第59条に規定されています。

<日本国憲法第59条>

  1. 法律案は、この憲法に特別の定のある場合を除いては、両議院で可決したとき法律となる。
  2. 衆議院で可決し、参議院でこれと異なつた議決をした法律案は、衆議院で出席議員の三分の二以上の多数で再び可決したときは、法律となる。
  3. 前項の規定は、法律の定めるところにより、衆議院が、両議院の協議会を開くことを求めることを妨げない。
  4. 参議院が、衆議院の可決した法律案を受け取つた後、国会休会中の期間を除いて六十日以内に、議決しないときは、衆議院は、参議院がその法律案を否決したものとみなすことができる。

以下、日本国憲法第59条第2項から第4項についての解説をしましょう。

まずは、日本国憲法第59条第2項についてです。「衆議院で出席議員の3分の2以上の多数で再び可決したときは、法律となる」とあります。衆議院と参議院とで異なる議決がされたときは、日本国憲法第59条第1項の理屈をそのまま貫くと法律案は可決されません(衆議院と参議院の合わせ技一本になっていないから)。しかしこれでは国会で法律案が通りにくくなってしまいます。一方で、日本国憲法第56条第1項及び第2項と同じ要件で衆議院で法律案が通ったとしたら、参議院の意思は全く反映されないことになってしまいます(衆議院で同じ手続きを2回やっているだけ)。そこで、日本国憲法第56条第1項及び第2項よりも厳しい条件を課しました。それが日本国憲法第59条第2項であり、「衆議院で出席議員の3分の2以上の多数で再び可決する」という要件になっています。この点について「衆議院の優越の原則」が働いている条文であると言えます。衆議院は解散があり、解散のない参議院に比べると民意を反映している議院であるため、衆議院の優越が認められているという理屈も押さえておきましょう。

行政府に対する監督

くわしくは、議院内閣制の講義(次回)で解説します。

財政の監督

予算の審議

日本においては次のように予算が作成されます。

日本における予算の作成プロセス

まずは内閣が予算案を作り、それを国会に予算案を提出します(日本国憲法第86条)。

国会に予算案が提出されたら、衆議院から予算案が審議されます。衆議院から審議を開始しなければならないとしているのは予算の作成の場面だけです。ですから、法律案の審議や内閣総理大臣の指名などは参議院から審議を開始しても法的にはOKなのです。予算については衆議院から審議を開始しなければならないという原則を「衆議院には予算先議権がある」という言い方をします。これが憲法第60条1項の内容です。

予算と法律案の審議の違いのポイントは2つです。

  1. 予算は衆議院から必ず審議を開始しなければならない。(法律案はどちらからでもよい)
  2. 予算の審議の際には、必ず公聴会を開かなければならない。(公聴会は任意)

そして、「衆議院と参議院とで異なった結論が出たとき」または「衆議院で予算が通ったのに30日以内に参議院で予算が可決されないとき」にどのように対応すべきなのかが日本国憲法60条2項に書かれています。

<日本国憲法第60条第2項>

予算について、参議院で衆議院と異なつた議決をした場合に、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は参議院が、衆議院の可決した予算を受け取つた後、国会休会中の期間を除いて三十日以内に、議決しないときは、衆議院の議決を国会の議決とする。

赤字の数字は、分かりやすくするために筆者が付けました。またはの場合が起こったとき、「衆議院の議決を国会の議決とする」と書いてあります。こちらには衆議院の再議決という工程が全く入っていない点が知識の急所です。

財政民主主義

日本国憲法第83条において「国の財政を処理する権限は、国会の議決に基いて、これを行使しなければならない。」と規定されているように「財政民主主義」の規定が置かれています。国家が様々な活動をしていくのに必要なお金は、結局のところは国民が負担します。したがって、財政の適正な運用というのは国民の重大な関心事であるといえるため、国会にはこのような権限が備えられていると言ってもよいでしょう。

憲法改正の手続き

国会には憲法改正の発議を行う権限を持っています。

日本国憲法第96条を読んでみましょう。

<日本国憲法第96条>

  1. この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。
  2. 憲法改正について前項の承認を経たときは、天皇は、国民の名で、この憲法と一体を成すものとして、直ちにこれを公布する。

まずは大まかに改正手続きをフローチャートで見てみましょう。

日本国憲法改正手続きの流れ

まず憲法改正原案の発議を行い、各議院において3分の2以上の賛成で国民に対して憲法改正案を発議します。そして、国民投票を行います。国民投票についての詳細は「憲法改正手続法 (日本国憲法の改正手続に関する法律)」という法律に書かれています。

<憲法改正国民投票法第126条>
国民投票において、憲法改正案に対する賛成の投票の数が第九十八条第二項に規定する投票総数の二分の一を超えた場合は、当該憲法改正について日本国憲法第九十六条第一項 の国民の承認があったものとする。

「投票総数の2分の1を超えるとき」と書いてありますね。投票総数というのは、賛成票と反対票の合計数のことを言います。

国民投票で投票総数の過半数を取ると、内閣総理大臣は憲法改正の公布の準備をし、最終的には天皇が国民の名において公布されます。

条約の承認

まずはフローチャートを見て流れを簡単に確認してみましょう。

日本における条約の承認

日本国憲法において、条約の締結の権限は内閣にあります。そして国会による承認が必要です。ポイントで確認しますと、

  • 国会の承認は事前または事後のどちらでもOK(日本国憲法第73条第3号)
  • 衆議院から審議をスタートさせるという規定がない(日本国憲法第61条…先議権について「準用」されていない)

国会の承認を必要とするという点で、内閣の権能のチェック機能を果たしています。

スペインにおける国会の権能

はじめに

スペイン憲法第66条第2項に国会の権能についての条文があります。

<スペイン憲法第66条第2項>

Las Cortes Generales ejercen la potestad legislativa del Estado, aprueban sus Presupuestos, controlan la acción del Gobierno y tienen las demás competencias que les atribuya la Constitución.

国会は、国の立法権を行使し、予算を承認し、内閣の行為を監督、および憲法が付与するその他の権能を有する。

以下、ポイントを絞って、国会の権能について解説をしたいと思います。

立法

立法発議者について

スペインにおいてはどの機関が立法の発議をすることができるのでしょうか。まずは憲法の条文から確認してみます。スペイン憲法第87条です。

<スペイン憲法第87条>

  1. La iniciativa legislativa corresponde al Gobierno, al Congreso y al Senado, de acuerdo con la Constitución y los Reglamentos de las Cámaras.
  2. Las Asambleas de las Comunidades Autónomas podrán solicitar del Gobierno la adopción de un proyecto de ley o remitir a la Mesa del Congreso una proposición de ley, delegando ante dicha Cámara un máximo de tres miembros de la Asamblea encargados de su defensa.
  3. Una ley orgánica regulará las formas de ejercicio y requisitos de la iniciativa popular para la presentación de proposiciones de ley. En todo caso se exigirán no menos de 500.000 firmas acreditadas. No procederá dicha iniciativa en materias propias de ley orgánica, tributarias o de carácter internacional, ni en lo relativo a la prerrogativa de gracia.

  1. 立法発議権は、憲法及び議院規則に従い、内閣、下院及び上院に属する。
  2. 自治州議会は、法律草案の採択を内閣に請求し、または法律提案を下院役員会に送付することができるものとする。この場合においては、自治州議会は、法案の趣旨説明に任ずる最高3名の議員を下院に派遣することができる。
  3. 組織法は、法律提案の提出につき、国民発議権の行使形式及び要件を定めるものとする。すべての場合において、50万人を下らない信頼すべき署名を要するものとする。国民発議権は、組織法、税法もしくは国際性を有する法律又は恩赦に関する事項の場合においては、これを行使することができない。

まとめると、立法発議権を持っているのは、条文の表現で言うと、以下の5つの機関です。

  1. 内閣
  2. 下院
  3. 上院
  4. 自治州議会 (スペインには17の自治州が存在し、それぞれに自治州議会 (Asambleas de las Comunidades Autónomas)が設けられている)
  5. 50万人以上による国民発議 (署名)

中でも、内閣が提出する法案のことを特別に「法律草案 (proyecto de ley)」と呼び、それ以外の機関で発議された法案のことを「法律提案 (proposición de ley)」と呼びます。

それぞれどのような取扱いの違いがあるのでしょうか。表でまとめてみました。

形式
発議者
内容
法律草案
(proyecto de ley)
内閣 法律提案に優先して取り扱われる(スペイン憲法第89条第1項)。下院に先議権がある。
法律提案
(proposición de ley)
下院 原則として、内閣に送付され、その意見を徴した上で、下院が国会審議の是非を決定する。その後の手続きは、法律草案と同様である。
上院
自治州議会
50万人以上の国民

 

「法律草案 (proyecto de ley)」にせよ「法律提案 (proposición de ley)」にせよ、国会審議にかけるか否かの決定権を下院が有するという原則(下院優先の原則)を設けているという点は注目に値すべき点です。

なお、「法律草案 (proyecto de ley)」にせよ「法律提案 (proposición de ley)」にせよ、一旦「法律」として成立すれば、その間に何らの優劣の差はありません。

法律の成立要件について

原則

原則として、本会議における定足数及び議決要件はスペイン憲法第79条に規定されています。

<スペイン憲法第79条>

  1. Para adoptar acuerdos, las Cámaras deben estar reunidas reglamentariamente y con asistencia de la mayoría de sus miembros.
  2. Dichos acuerdos, para ser válidos, deberán ser aprobados por la mayoría de los miembros presentes, sin perjuicio de las mayorías especiales que establezcan la Constitución o las leyes orgánicas y las que para elección de personas establezcan los Reglamentos de las Cámaras.
  3. El voto de Senadores y Diputados es personal e indelegable.

  1. 議決を採択するためには、議院は、規則に従い召集され、かつ議員の過半数の出席があることを要する。
  2. 議決が有効なためには、出席議員の過半数による賛成を要するものとする。但し、憲法または組織法が定める特別の多数決及び議院規則が人の選出につき定める特別の多数決はこの限りではない。
  3. 上院議員及び下院議員の表決権は、一身専属たるものとし、かつ委任を許さない。

原則として、定足数は総議員の過半数であり、議決は出席議員の過半数により成立します。定足数については日本よりも要件が厳しいですね。

例外 - 組織法 (Ley Orgánica)について

前述した原則に対しての例外に該当する条文はいくつか存在しますが、日本法の概念にはない「組織法 (Ley Orgánica)」について解説をしてみたいと思います。

まずはスペイン憲法第81条第1項及び第2項を引用したいと思います。

<スペイン憲法第81条>

  1. Son leyes orgánicas las relativas al desarrollo de los derechos fundamentales y de las libertades públicas, las que aprueben los Estatutos de Autonomía y el régimen electoral general y las demás previstas en la Constitución.
  2. La aprobación, modificación o derogación de las leyes orgánicas exigirá mayoría absoluta del Congreso, en una votación final sobre el conjunto del proyecto.

  1. 基本的権利及び公的自由の具体化、自治州憲章及び総選挙区制度を承認する法律並びに憲法に定められたその他の法律は、これを組織法という。
  2. 組織法の承認、改正または廃止は、草案の全部につき、下院の最終表決において絶対多数を要するものとする。

スペイン憲法第81条第2項の規定にある「絶対多数」が意味するところは、全議員の過半数のことを言います。したがって、「組織法 (Ley Orgánica)」の成立には、原則よりも厳しい要件が課されていることになります。

「組織法 (Ley Orgánica)」については、さらに2つの条文について言及しておかなければなりません。

まずはスペイン憲法第75条です。

<スペイン憲法第75条>

  1. Las Cámaras funcionarán en Pleno y por Comisiones.
  2. Las Cámaras podrán delegar en las Comisiones Legislativas Permanentes la aprobación de proyectos o proposiciones de ley. El Pleno podrá, no obstante, recabar en cualquier momento el debate y votación de cualquier proyecto o proposición de ley que haya sido objeto de esta delegación.
  3. Quedan exceptuados de lo dispuesto en el apartado anterior la reforma constitucional, las cuestiones internacionales, las leyes orgánicas y de bases y los Presupuestos Generales del Estado.

  1. 両議院は、本会議において及び委員会により機能するものとする。
  2. 両議院は、法律草案または法律提案の議決を、常設立法委員会に委任することができる。ただし、本会議は、何時にても、委任の目的となった法律草案または法律提案の審議及び表決を求めることができるものとする。
  3. 憲法改正、国際問題、組織法及び基盤法ならびに国の一般予算は、前項の規定からこれを除外する。

「組織法 (Ley Orgánica)」の成否についての審議をする場合には、「委員会」に委任することができないという点を上の条文から読み取ってください。

もう1つは、スペイン憲法第82条第1項です。

<スペイン憲法第82条第1項>

Las Cortes Generales podrán delegar en el Gobierno la potestad de dictar normas con rango de ley sobre materias determinadas no incluidas en el artículo anterior.


国会は、前条(筆者註: 組織法)に含まれない特定の事項につき、法律の形式を有する規範を公布する権限を内閣に委任することができるものとする。

つまり、「組織法 (Ley Orgánica)」について国会は内閣に立法権を委任することができません。

国や国民にとって特に重要だと考えられる事項について、通常の法律よりも厳格な成立要件を要するのが「組織法 (Ley Orgánica)」ですから、きちんと国会の本会議で議事を進行すべきだという価値観が働いているのでしょう。「憲法附属法」のような扱いを受けるのが「組織法 (Ley Orgánica)」の特徴です。

さて、スペイン憲法第81条第1項の「憲法に定められたその他の法律」については、[原誠・黒田清彦ら編「スペインハンドブック」・三省堂(1982)]を参考に一例をまとめてみました。箇条書きで列挙している条文番号については、全てスペイン憲法の条文です。また、条文の後ろのスペイン語は全て憲法の条文に対応する「組織法 (Ley Orgánica)」の名称(具体例)です。

  • 軍の組織の根本 (第8条第2項) — Ley Orgánica 6/1980, de 1 de julio, por la que se regulan los criterios básicos de la Defensa Nacional y la Organización Militar
  • 護民官制度 (第54条)(あとで詳しく解説)– Ley Orgánica 3/1981, de 6 de abril, del Defensor del Pueblo
  • 武装した徒党またはテロ分子の行動に対する捜査に関して、特定の者に対して行われる基本的人権の停止 (第55条第2項) — Ley Orgánica 9/1984, de 26 de diciembre, contra la actuación de bandas armadas y elementos terroristas y de desarrollo del artículo 55.2 de la Constitución
  • 国王の退位及び譲位に関する疑義 (第57条第5項)(第5回のスペインの国王の回で取り上げました)– Ley Orgánica 3/2014, de 18 de junio, por la que se hace efectiva la abdicación de Su Majestad el Rey Don Juan Carlos I de Borbón.
  • 各県における上院議員の選挙 (第69条第2項) — Ley Orgánica 5/1985, de 19 de junio, del Régimen Electoral General – LOREG
  • 立法の国民発議権(いわゆるイニシアティブ)(第87条第3項)– Ley Orgánica 3/1984, de 28 de marzo, reguladora de la iniciativa legislativa popular
  • 国民投票 (第92条第3項) — Ley Orgánica 2/1980, de 18 de enero, sobre regulación de las distintas modalidades de referéndum
  • 憲法に基づく権限を国際機関に行使させる条約の承認 (第93条) — Ley Orgánica 10/1985, de 2 de agosto, de autorización para la adhesión de España a las Comunidades Europeas
  • 警察制度 (第104条第2項) — Ley Orgánica 2/1986, de 13 de marzo, de Fuerzas y Cuerpos de Seguridad
  • 枢密院制度 (第107条)(第9回の内閣制度で取り上げます)– Ley Orgánica 3/1980, de 22 de abril, del Consejo de Estado
  • 警戒態勢、非常事態及び戒厳 (第116条第1項) — Ley Orgánica 4/1981, de 1 de junio, de los estados de alarma, excepción y sitio
  • 裁判所の構成、機能及び運営並びに単一機関を構成するキャリア裁判官及び司法に携わる職員の法的規律について (第122条第1項) – Ley Orgánica 6/1985, de 1 de julio, del Poder Judicial
  • 司法総評議会に関する規律並びにその構成員及び職務兼任禁止、任命、昇進、監督及び懲戒制度について(第122条第2項) — Ley Orgánica 1/1980, de 10 de enero, del Consejo General del Poder Judicial
  • 司法総評議会を構成する裁判官のうち、裁判官の中から任命される委員に関する要件について(第122条第3項) — Ley Orgánica 1/1980, de 10 de enero, del Consejo General del Poder Judicial
  • 国及び自治州の構造的な財政赤字について、国内総生産に関連させ、その上限を定めること。(第135条第2項) — Ley Orgánica 2/2012, de 27 de abril, de Estabilidad Presupuestaria y Sostenibilidad Financiera.
  • 予算の安定性の原則並びに財政政策及び金融政策の分野での公行政機関相互間の制度的な調整機構が各手続において参画する事項(第135条第5項) — Ley Orgánica 2/2012, de 27 de abril, de Estabilidad Presupuestaria y Sostenibilidad Financiera.
  • 会計監査院の構成、組織及び権限について (第136条第4項) — Ley Orgánica 2/1982, de 12 de mayo, del Tribunal de Cuentas
  • 県境の変更 (第141条第1項)
  • 自治州憲章の改正 (第147条第3項) — Ley Orgánica 6/2006, de 19 de julio, de reforma del Estatuto de Autonomía de Cataluña
  • 国の権限の自治州への委譲または委任 (第150条第2項) — Ley Orgánica 9/1992, de 23 de diciembre, de transferencia de competencias a Comunidades Autónomas que accedieron a la autonomía por la vía del artículo 143 de la Constitución
  • 自治州設置の住民投票 (第151条第1項)(第12回の地方自治で取り上げます)– Ley Orgánica 2/1980, de 18 de enero, sobre regulación de las distintas modalidades de referéndum
  • 自治州の財政権限、国と自治州の間の紛争解決及び財政協力 (第157条第3項) — Ley Orgánica 8/1980, de 22 de septiembre, de financiación de las Comunidades Autónomas
  • 憲法裁判所における違憲訴訟及び人権保護訴訟の提訴資格 (第162条第2項)(第11回の憲法裁判所で取り上げます)– Ley Orgánica 2/1979, de 3 de octubre, del Tribunal Constitucional – LOTC
  • 憲法裁判所の機能、その構成員に関する規律、憲法裁判所に対する訴訟手続及び訴権行使のための条件 (第165条) 第11回の憲法裁判所で取り上げます)– Ley Orgánica 2/1979, de 3 de octubre, del Tribunal Constitucional – LOTC

ここで、「国民投票」について言及したいと思います

スペイン憲法第92条1項で「特に重要な政治的決定は、これをすべての市民の諮問投票に付することができる。」という定めがあるように、下院で事前の承認があった場合に、内閣総理大臣が国王に具申して国王が布告する、というプロセスを経て、国民投票を行う制度がスペインには存在します。

実際に行われた代表的な事例としては、2004年10月29日にローマにおいてEU加盟各国によって締結された「欧州憲法条約」の批准をめぐって国民投票が実施されたことをあげておきましょう。2005年2月20日に国民投票が実施され、投票率は42.3%に止まりましたが、賛成票は76.7%、反対票は17.3%、棄権票は6.0%でした。国会は国民投票に拘束されずに批准の是非の結論を出すことができますが、2005年4月28日に下院で(賛成票が311人、反対票は19票)、2005年5月18日には上院でそれぞれ憲法条約の批准を承認しました。なお、この条約批准については、憲法上の規定にもある条約の合憲性審査が行われています。詳細は、本講義の違憲審査制度の回や[野口健格「スペイン憲法裁判所における条約の合憲性審査」『法学政治学論究』Vol.96(2013.3)1-33頁]を参照してください。

日本においても「間接民主制」を原則としていますが、その例外規定として、「地方公共団体における特別法制定の際の住民投票」(日本国憲法第95条)と「憲法改正」(日本国憲法第96条)以外の場面では国民投票については日本国憲法の条文に存在しないことと比較しておきましょう。

まとめ
法律の種類 説明
普通法 ley ordenaria 一般的な法律。
議決成立要件は、出席議員の過半数。(スペイン憲法第79条第2項)
組織法 ley orgánica 基本的人権及び公的自由の具体化、自治州憲章(地方自治の講義でくわしく解説)及び選挙制度を承認する法律並びに憲法に定められたその他の法律 (スペイン憲法第81条第1項)
議決成立に要する要件は、衆議院の最終表決において絶対多数(全議員の過半数)を要する。 (スペイン憲法第81条第2項)
普通法については、各議院の委員会に審議を付託することができるが、組織法はできない(スペイン憲法第75条第3項)。常に本会議で審議を行う。

法律案の議決時における上院と下院の関係について

周知のとおり、スペインでも二院制が敷かれていますが、法律案の議決の場面において上院と下院とはどのような関係になるのでしょうか。

スペイン憲法第90条を見てみましょう。

<スペイン憲法第90条>

  1. Aprobado un proyecto de ley ordinaria u orgánica por el Congreso de los Diputados, su Presidente dará inmediata cuenta del mismo al Presidente del Senado, el cual lo someterá a la deliberación de éste.
  2. El Senado en el plazo de dos meses, a partir del día de la recepción del texto, puede, mediante mensaje motivado, oponer su veto o introducir enmiendas al mismo. El veto deberá ser aprobado por mayoría absoluta. El proyecto no podrá ser sometido al Rey para sanción sin que el Congreso ratifique por mayoría absoluta, en caso de veto, el texto inicial, o por mayoría simple, una vez transcurridos dos meses desde la interposición del mismo, o se pronuncie sobre las enmiendas, aceptándolas o no por mayoría simple.
  3. El plazo de dos meses de que el Senado dispone para vetar o enmendar el proyecto se reducirá al de veinte días naturales en los proyectos declarados urgentes por el Gobierno o por el Congreso de los Diputados.

  1. 普通法または組織法の草案が下院において可決されたときは、下院議長は直ちにこれを上院議長に報告するものとし、上院議長は、これを上院の審議に付するものとする。
  2. 上院は、法案の受領後2月以内に、理由書を以ってこれを否定し又はその修正案を提出することができる。下院は、上院における原案議決の場合には絶対多数決により、上院へ送付した後2月を経過した時は単純多数決により、原案を再び可決するか、または、単純多数決により、単純多数決により、修正案を採択するか否かを言明するのでなければ、草案を国王の裁可に付することができない。
  3. 上院が草案を否決しまたは修正するための2月の期間は、内閣又は上院によr緊急と宣言された草案の場合においては、これを20日に減ずるものとする。

下院は上院よりも先に法律案の審議を行うことができるのに対し、上院は下院法案への拒否権(否決、修正、未決・中断)を有しているという関係が、スペイン憲法第90条から読み取れると思います。

国王の裁可

国王は、国会により可決した法律を15日以内に裁可し、公布し、及び直ちに公刊することを命じなければなりません。

行政府に対する監督

くわしくは、次の第8回の議院内閣制の回でくわしく取り上げます。

財政の監督

スペイン憲法では、「第7編 経済及び財政 (Economía y Hacienda)」(第128条から第136条まで)という「編」が1編分設けられており、その重要性は憲法の構成を見ても明らかです。

スペイン憲法第133条には「租税法律主義」が謳われ、「租税を設ける原権限は、法律に従い、排他的に国に属する(1項)」と明文化されています。また、自治州や地方公共団体にも租税権が与えられています(2項)。

さらに、スペイン憲法第134条には国の一般予算についての規定があります。

<スペイン憲法第134条>

  1. Corresponde al Gobierno la elaboración de los Presupuestos Generales del Estado y a las Cortes Generales su examen, enmienda y aprobación.
  2. Los Presupuestos Generales del Estado tendrán carácter anual, incluirán la totalidad de los gastos e ingresos del sector público estatal y en ellos se consignará el importe de los beneficios fiscales que afecten a los tributos del Estado.
  3. El Gobierno deberá presentar ante el Congreso de los Diputados los Presupuestos Generales del Estado al menos tres meses antes de la expiración de los del año anterior.
  4. Si la Ley de Presupuestos no se aprobara antes del primer día del ejercicio económico correspondiente, se considerarán automáticamente prorrogados los Presupuestos del ejercicio anterior hasta la aprobación de los nuevos.
  5. Aprobados los Presupuestos Generales del Estado, el Gobierno podrá presentar proyectos de ley que impliquen aumento del gasto público o disminución de los ingresos correspondientes al mismo ejercicio presupuestario.
  6. Toda proposición o enmienda que suponga aumento de los créditos o disminución de los ingresos presupuestarios requerirá la conformidad del Gobierno para su tramitación.
  7. La Ley de Presupuestos no puede crear tributos. Podrá modificarlos cuando una ley tributaria sustantiva así lo prevea.

  1. 国の一般予算の作成は、内閣がこれにあたり、その審議、修正及び承認は、国会がこれにあたる。
  2. 国の一般予算は、各年性のものとし、国の公的部門の歳入及び歳出の全部を含むものとし、並びに国税に影響を及ぼす租税の特典の額を計上するものとする。
  3. 内閣は、少なくとも前年度の終了する3か月前に、国の一般予算を下院に提出することを要するものとする。
  4. 予算案が当該会計年度の初日前に承認されなかったときは、新たな予算が承認されるまで、前年度の予算が自動的に延長されるものとする。
  5. 国の一般予算が承認された時は、内閣は、当該会計年度の公費の増額又は歳入の減額を含む法律草案を提出することができるものとする。
  6. 信用の増額もしくは予算歳入の減額を予想させる提案または修正案は全てその提出にあたり内閣の同意を要するものとする。
  7. 予算は、租税を創設することができない。予算は、実質租税法に定めのあるときは、租税を変更することができるものとする。

日本法との比較としては、予算の作成は内閣が行い、審議は国会で行い、しかも下院から行わなければならないという点は全く同じであるという点でしょう。

近年のトピックとしては、スペイン憲法第135条の改正が行われたことです。2008年にリーマンショック以降スペインの経済は低迷し、さらにギリシアの国家財政問題がEU加盟国にも影響を及ぼしました。2011年8月16日にドイツとフランスの首脳会談が行われ、ユーロ圏17か国の憲法、又は基本的な法律に財政赤字の上限を記載し、均衡予算の原則を取り入れるべきことが提言されました。政権を握っていた国民党(PP)のラホイ首相も「財政健全化条項」を憲法条文の中に入れるべきであると考えていました。詳細な経緯については、[三輪和宏「2011 年におけるスペイン憲法改正及び政党間合意の成立 ―財政健全化に向けた欧州連合加盟国の一つの試み―」『レファレンス 平成24年5月号』]に譲りますが、結局「財政健全化条項」が憲法第135条に入れられ、内閣の公債発行又は信用契約締結の承認についての旧135条は廃止されました。

他に、国会は会計監査院(国会に属する)による国の一般会計の検査及び承認 (スペイン憲法第136条)を行う権限を国会は持っています。

憲法改正の議決

「憲法改正 (La Reforma Constitucional)」は、日本のそれとは異なり、改正する条文によって、その手続きは異なります。

まずは、「全面改正手続 (la revisión total de la Constitución)」と呼ばれる厳しい要件のもとでの憲法改正手続きの規定をご紹介します。

<スペイン憲法第168条> -特別な規定の場合-

  1. Cuando se propusiere la revisión total de la Constitución o una parcial que afecte al Título preliminar, al Capítulo 2.º, Sección 1ª del Título I o al Título II, se procederá a la aprobación del principio por mayoría de dos tercios de cada Cámara, y a la disolución inmediata de las Cortes.
  2. Las Cámaras elegidas deberán ratificar la decisión y proceder al estudio del nuevo texto constitucional, que deberá ser aprobado por mayoría de dos tercios de ambas Cámaras.
  3. Aprobada la reforma por las Cortes Generales, será sometida a referéndum para su ratificación.

  1. 憲法の全面的見直しまたは序編、第1編第2編第1節もしくは第2編に係る部分的見直しが提案された時は、各々の議院の3分の2以上の多数決により、その原則を可決し、かつ直ちに国会を解散するものとする。
  2. 選挙後の両議院は、前項の決定を承認し、かつ新たな憲法の研究を行うことを要するものとする。新たな憲法は、両議院の3分の2以上の多数決により、これを可決することを要する。
  3. 憲法改正が国会により可決されたときは、その承認のため、これを国民投票に付するものとする。

全面改正、主権、政体、基本的人権または王位に関する規定の改正の場合は、下院議員・上院議員・内閣または自治州議会による発議 (スペイン憲法第167条)で、各議院で総議員の3分の2以上の議決を経た後、直ちに国会を解散して総選挙を行い、新国会にて「改正草案」の作成・審議に入り、再び各議院において総議員の3分の2以上による「改正草案」の可決を経て、さらに国民投票による承認を要します (スペイン憲法第168条)。文章だけで解説されてもいまいち頭に残らないと思いますので、フローチャートでまとめてみましょう。

スペイン憲法168条(憲法改正)

次に、「部分改正手続 (la revisión parcial de la Constitución)」についてご紹介します。

<スペイン憲法第167条> -一般的な規定の場合-

  1. Los proyectos de reforma constitucional deberán ser aprobados por una mayoría de tres quintos de cada una de las Cámaras. Si no hubiera acuerdo entre ambas, se intentará obtenerlo mediante la creación de una Comisión de composición paritaria de Diputados y Senadores, que presentará un texto que será votado por el Congreso y el Senado.
  2. De no lograrse la aprobación mediante el procedimiento del apartado anterior, y siempre que el texto hubiere obtenido el voto favorable de la mayoría absoluta del Senado, el Congreso por mayoría de dos tercios podrá aprobar la reforma.
  3. Aprobada la reforma por las Cortes Generales, será sometida a referéndum para su ratificación cuando así lo soliciten, dentro de los quince días siguientes a su aprobación, una décima parte de los miembros de cualquiera de las Cámaras.

  1. 憲法改正草案は、各々の議院において、5分の3以上の多数決により、これを可決することを要する。両議院において議決が得られなかった場合は、下院議員及び上院議員の同数で構成される委員会を設置することにより、議決を得ることを試みるものとし、委員会は、下院および上院によって表決さるべき成案を提出するものとする。
  2. 前項の手続による可決が得られない場合において、成案が上院の絶対多数の賛成票を得たときは、下院は、3分の2以上の多数決により、改正を可決することができる。
  3. 憲法改正が国会により可決された場合において、その可決に次ぐ15日内に、何れかの議院の10分の1の議員の請求があるときは、その承認のため、これを国民投票に付するものとする。

原則として、下院議員・上院議員・内閣または自治州議会による発議 (スペイン憲法第167条)で、国会審議を経て各議院において総議員の5分の3以上による「改正草案」の可決があれば、憲法改正が行えます。場合によっては国民投票を要する場合もありますが、それは条文のとおりです。フローチャートでまとめてみましょう。

スペイン憲法167条(憲法改正)

1978年憲法が制定されてからこれまで2回改正が行われました。1度目は1992年の「マーストリヒト条約批准にともなう憲法改正」、2度目は2011年の「財政健全化のための憲法改正」です。1度目のについては憲法裁判所の回でくわしく取り上げます。2度目の「財政健全化のための憲法改正」についての経緯は、[三輪和宏「2011 年におけるスペイン憲法改正及び政党間合意の成立 ―財政健全化に向けた欧州連合加盟国の一つの試み―」『レファレンス 平成24年5月号』]にくわしく載っています。

なお、憲法改正手続きに関する論文については、[野口健格「スペイン憲法学における憲法改正手続条項の改正の立法的視座」『中央学院大学 法学論叢』第29巻第2号]などがくわしいです。

国際条約締結の事前承認

国が条約又は協定により義務を負うための合意をなす場合(スペイン憲法第94条第1項)若しくは国際条約及び国際協定の廃棄について(スペイン憲法第96条第2項)は、事前に国会の承認を要します。

外国に対する宣戦布告または講和条約についての事前承認

スペイン憲法第63条3項に「国会の事前の承認により、宣戦を布告し及び講和条約を締結することは国王の権能である。」とあり、宣戦布告及び講和条約の締結を行うのは国王ですが、事前に国会による承認を要するという点で、民主的なコントロールが働いています。

退位、譲位及び王位継承の順序における事実上または法的な疑義が生じたときの対応

スペイン憲法第57条第5項を根拠に、先の国王陛下の譲位のプロセスにおいて組織法が発布され、ホアン・カルロス1世からフェリペ6世へのご譲位が実現しました。くわしくは、第5回のスペインの国王の回で取り上げました。

憲法裁判所の裁判官の指名

第11回の違憲審査制度の回でくわしくお話します。

司法総評議会の委員の指名

第10回の裁判制度の回でくわしくお話します。

護民官(オンブズマン)の任命

日本には「市民オンブズマン」という存在がいますが、公務員としてのオンブズマンは存在しません。

一方、スペインでは護民官 (Defensor del Pueblo)と呼ばれる公務員のオンブズマンがいます。これは憲法上の制度で、具体的にはスペイン憲法第54条に規定が存在します。

<スペイン憲法第54条>

Una ley orgánica regulará la institución del Defensor del Pueblo, como alto comisionado de las Cortes Generales, designado por éstas para la defensa de los derechos comprendidos en este Título, a cuyo efecto podrá supervisar la actividad de la Administración, dando cuenta a las Cortes Generales.


組織法は、本編 (筆者註: 基本的人権の編)に定められた権利の保護のため、国会により任命された高等受任機関たる護民官の制度を定めるものとする。護民官は、この目的のため、行政府の活動を監視し、国会に報告を行うことができる。

護民官の任期や選任方法などの細かい規定は、「護民官に関する組織法 (Ley Orgánica 3/1981, de 6 de abril, del Defensor del Pueblo)」に存在します。

護民官の任期は5年で(護民官に関する組織法第2条第1項)、下院議員の5分の3以上の賛成票を得た後、20日以内に上院において同じ手続きをとれば任命されます(護民官に関する組織法第2条第4項)。もしこの決議要件を満たさない場合は新たな会議を開き、下院の5分の3以上の賛成票が得られれば、上院では絶対多数の賛成があれば任命されます(護民官に関する組織法第2条第5項)。被選資格についての規定は特にはありませんが、元裁判官や大学教授が任命される例があります。

なお、「護民官に関する組織法 (Ley Orgánica 3/1981, de 6 de abril, del Defensor del Pueblo)」の条文については、[池田実「(資料)(邦訳)スペインの護民官組織法とその関連法規」『山梨大学教育人間科学部紀要』 4(1),149-166頁]、護民官の現況については[澤敬子「スペイン護民官聞き取り調査報告 -ジェンダー・バイオレンス問題を中心に-」 『現代社会研究科論集』7号, 17-26頁・2013年]などがくわしいです。

下院と上院の関係について

下院が優越する場合

スペイン憲法における下院が上院に優越する代表的なケースをご紹介したいと思います。

  • 組織法 (Leyes Orgánicas)を絶対多数で採択すること。 (スペイン憲法第81条第2項)
  • 内閣が作った暫定法規である政令法 (Decretos-Leyes)を承認すること。 (スペイン憲法第86条第2項)
  • 法律案の先議権(スペイン憲法第89条)
  • 法律案の議決(スペイン憲法第90条)
  • 国民投票により、民意を問うことを認めること。 (スペイン憲法第92条2項)
  • 首班指名投票を行うこと。 (スペイン憲法第99条)
  • 首相の信任投票を行うこと。 (スペイン憲法第112条)
  • 不信任動議 (Moción de Censura)によって首相の責任を問うこと。 (スペイン憲法第113条)
  • 緊急事態の承認や戒厳の宣言(スペイン憲法第116 条第3項、4項)

上院が優越する場合

下院にはなくて上院には存在するものもあります。その代表例を見てみます。

  • 自治州政府が憲法上若しくは法律上の義務を履行しないとき又はスペイン国家の利益に反する行為を行ったときに政府がとる対抗手段である強制執行 (ejecuion forzosa)をとること(スペイン憲法第157条)
  • 地方公共団体における特定の団体が公益を著しく損ない、憲法上の義務不履行も認められたため、政府がこれを解散させようする場合における上院の承認

まとめ

ここで、簡単に上院と下院の権能の違いについてまとめてみましょう。

スペイン上院及び下院の権能のまとめ

おわりに

今回は国会の2回目ということで、国会の権能に着目してみました。

かなり盛りだくさんの内容でしたので、どこから押さえていけばよいのかが分からなくなっている人が多いと思います。優先的に以下に示す点は理解しておくようにしてください。

  • 立法発議ができる機関についての日本とスペインの違い
  • 法律が制定されるまでの日本とスペインの手続きの違い
  • スペインの「組織法 (Ley Orgánica)」とは何か?
  • 憲法改正手続きについての日本とスペインの違い
  • オンブズマン(護民官)制度の有無における日本とスペインの違い
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それから、内閣総理大臣の決定方法や司法権、憲法裁判所または地方自治の部分についてはまだ学習が終わっていませんので、分からなければ「とりあえずパス」でOKです。但し、学習してからもう一度戻ってください。ある程度学習しないと分からないということが法律学の学習には多いですから、分からなくても焦らないことが大切です。これは普段の日本法の学習の時も同じですから、そういう心構えをもって法律学を学習しましょう。

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