第6回 スペインの国会と日本の国会にはどのような違いがあるのでしょうか?(その1) – 二院制の意義及び国会議員選出編

最終更新日: 平成29年(西暦2017年)7月17日

はじめに

今回と次回にわたって、国会 (Cortes Generales)についての日西法制度を比較します。

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今回(国会編第1回)は二院制の意義と国会議員の選出方法について取り上げます。結論から申し上げれば、2つの議院が存在するという点においては日本もスペインも変わらないのですが、なぜ二院制を採用しているのかという点について日本とスペインとではその思想が異なります。そのポイントを押さえるのが今回の第1の目的です。

これが理解できれば、議員をどのように選ぶのか、議員の任期や解散の有無などの制度設計にも影響を与えることが理解できると思います。どういった点で日本とスペインの制度が異なるのかを知ることが今回の講義の第2の目的です。

日本の法制度についてもくわしく解説をしました。中学校や高校の公民の授業の復習のような内容ですが、制度比較をする際に手を抜くことは許されないからです。

それでは、はじめましょう。

日本とスペインの国会における二院制の意味のちがい

スペインの国会 (Cortes Generales)は、下院(Congreso de los diputados)と上院(Senado)の二院で構成されています。この点については、日本に「衆議院」と「参議院」があるのと同様です。概ね、日本の衆議院にあたるのが下院、参議院にあたるのが上院だと考えてください。

まずは日本もスペインも二院制を採用しているという根拠条文を引っ張ってみます。

最初に日本国憲法です。

<日本国憲法第四十二条>

国会は、衆議院及び参議院の両議院でこれを構成する。

次にスペイン憲法です。

<スペイン憲法第66条第1項>

Las Cortes Generales representan al pueblo español y están formadas por el Congreso de los Diputados y el Senado.

国会はスペイン国民を代表し、下院及び上院でこれを構成する。

しかし、二院制を意味する内容が日本とは異なります。それを比較表でまとめてみました。

日本 スペイン
国会と内閣の関係 議院内閣制 議院内閣制
存在意義 衆議院

(下院)

国民の代表 国民の代表
参議院

(上院)

良識の府
(憲法の条文上根拠なし)
地方を代表する議院
(憲法第69条第1項)

 

日本の場合、学説では衆議院は「国民の代表機関」であるのに対して、参議院は「良識の府」と考えられています(憲法上に直接根拠が書いてあるわけではない)。

それに対して、スペインにおいては、下院は日本の衆議院と同じですが、上院はスペインが地方色の強い国であることを反映しているためか、「地方を代表する機関 (Cámara de Representación Territorial)」として位置づけられています。このことは、憲法の条文にも書かれています。

<スペイン憲法第69条第1項>

El Senado es la Cámara de representación territorial.

上院は、地方を代表する議院である。

*下線は筆者が付した

スペインは、イベリア半島に存在していた小さな国が少しずつ集まってできた国であり、それは現在でもその名残は脈々と受け継がれています。例えば、オリンピックなどで有名になったバルセロナのあるカタルーニャ地方(スペイン東部に位置する)やバスク地方 (スペイン北部地方)などでは独自の文化が栄え、スペインからの独立を目指した運動が盛んに行われているぐらいです。

こうした状況が「1978年憲法」においては考慮され、フランコ政権下では認められなかった「地方自治」をできる限り憲法上で保障するようになり、国政の最高機関である国会においても「地方を代表する機関 (Cámara de Representación Territorial)」を設置して、地方の声を国に届けられるような制度を整えました。

スペイン上院のこの性質は、解散制度の有無や議員の選出方法などにも影響を与えています。

日本とスペインの国会議員の任期を比較しよう

日本における国会議員の任期

日本における国会議員の任期についての条文を引っ張ってみます。

日本国憲法憲法第四十五条
衆議院議員の任期は、4年とする。但し、衆議院解散の場合には、その期間満了前に終了する。

日本国憲法第四十六条
参議院議員の任期は、6年とし、3年ごとに議員の半数を改選する。

衆議院は参議院と比較すると任期が短く解散があります。これは国民の声を国会に反映しやすくするためのものです。これに対して参議院は衆議院と比べると任期が長く解散もないため、落ち着いてじっくりと議論をする言論の府として設立されたのだと言われるところです。これが「参議院が良識の府」であると言われる理由です。

スペインにおける国会議員の任期

やはり根拠条文を引っ張ってみましょう。

<スペイン憲法第68条第4項>

El Congreso es elegido por cuatro años. El mandato de los Diputados termina cuatro años después de su elección o el día de la disolución de la Cámara.

下院は4年ごとに選挙を行う。下院の任期は、その選挙の日より4年目または下院解散の日に満了する。


<スペイン憲法第69条第6項>
El Senado es elegido por cuatro años. El mandato de los Senadores termina cuatro años después de su elección o el día de la disolución de la Cámara.

上院は、4年ごとに選挙を行う。上院議員の任期は、その選挙の日より4年目または上院の解散の日に満了する。

スペイン下院の任期は、日本の衆議院の任期とそっくりそのまま同じです。

これに対して特徴的なのはスペイン上院です。上院の任期も下院と同様に4年であり、しかも解散の制度があります。この点、日本の参議院がじっくりと議論ができるような言論の府を目指そうと考えられているのとは異なります。スペイン上院は「地方を代表する議院」という位置づけが明確に憲法に規定があることは前述したとおりですが、やはり地方の声をより反映させるために、上院も「解散」して民意を議院に反映できるような仕組みになっています。

選挙を比較しよう

日本とスペインの選挙権及び被選挙権を有する年齢を比較しよう

選挙権については、日本が衆議院・参議院ともに18歳以上、スペインも同様に上下院ともに18歳以上です。

被選挙権については、日本の場合は衆議院が25歳以上、参議院は30歳以上で有するのに対して、スペインは下院・上院ともに被選挙権は18歳以上で有します。

日本 スペイン
選挙権・被選挙権 衆議院

(下院)

選挙権 18歳
(公職選挙法第9条)
18歳
(憲法第68条第5項)
被選挙権 25歳
(公職選挙法第10条)
18歳
(憲法第68条第5項)
参議院

(上院)

選挙権 18歳
(公職選挙法第9条)
18歳
(憲法第68条第5項)
被選挙権 30歳
(公職選挙法第10条)
18歳
(憲法第68条第5項)

 

日本とスペインの選挙制度について比較しよう

日本の選挙制度(総説)

日本では、衆議院では小選挙区比例代表並立制、参議院では都道府県選挙区(都道府県によって小選挙区制もあり大選挙区制もあり)と全国区の比例代表制が並立的に採用されています。

高等学校の「政治経済」や「現代社会」の授業の復習になりますが、それぞれの制度を概観することにしましょう。

日本の衆議院議員の選挙制度

衆議院議員の定数は現在は475人(295人が小選挙区選出議員、180人が比例代表選出議員)ですが、次回の第48回衆議院議員総選挙から465人になる予定です。

ここでは、衆議院の選挙についての解説を行うという趣旨に鑑みて、次回の総選挙から実施されることになるであろう465人が定数であるということにして話を展開していきたいと思います。

日本における衆議院議員選挙のしくみ

衆議院議員総選挙においては、2つの選出方法があります。1つが小選挙区制であり、もう1つは比例代表選挙区制です。小選挙区選挙においては289名の議員、比例代表選挙においては176名の議員を選出します。

小選挙区制は全国を289の選挙区に分けて、それぞれの選挙区から1人の候補者が当選します。

一方、比例代表は、

  1. 全国を11のブロック(選挙区)に分ける。
  2. 各政党で候補者を決め、立候補者名簿を作成する。この時、名簿の中で事前に順位をつける
  3. 有権者が政党に投票する。
  4. 各政党の得票数に応じて議席数を確定する。
  5. 当選者が確定する。

あらかじめ立候補者名簿を作成する時に、名簿の中で事前に順位をつけて順位の高い順番に当選者を確定する方法を取ります。これを、拘束名簿式比例代表制(こうそくめいぼしきひれいだいひょうせい)と呼びます。有権者は投票用紙に政党名を記入し、投票します。そして、順位の高い順から当選者を確定します。

なお、衆議院議員総選挙における比例代表制には少し分かりにくい制度があります。

  1. 小選挙区と比例代表区とで重複立候補ができる。
  2. 重複立候補をした候補者に限り、小選挙区で落選しても比例代表区で復活することができる場合がある。

1番目は小選挙区と比例代表区とでダブって立候補ができることを意味します。

2番目は重複立候補をした人の中で小選挙区で落選した候補者が比例代表区で復活できる場合があります。これについてお話していきます。まず、小選挙区と比例代表選挙区で重複して立候補している場合に限って、その全員または一部の候補者を同じ順位にすることができます。例えば、名簿の中に同じ2位の候補者が何人もいるといったことが起こり得るということです。そして、同順位の候補者の中では、惜敗率(せきはいりつ)の数値が大きい順番で復活当選を果たすことができます。惜敗率というのは、小選挙区における最多得票者に対する得票の割合のことを言います。

たとえば、甲野一郎さんが100票で当選して、乙野次郎さんが90票をとったけれども落選してしまった場合です。惜敗率は次のように求めます。

90(乙野次郎さんの得票数)÷100(甲野一郎さんの得票数:最多得票者)×100 = 90.0%

重複立候補者すべてについてこれを算出し、これの多い順番から当選者が決まります。

先ほど小選挙区制には死票が多いと言いましたが、こういった惜敗率を求めることで死票を押さえる役割を果たしています。

日本の参議院議員の選挙制度

参議院議員の定数は242名です。根拠法令は、公職選挙法第4条第2項です。

公職選挙法第四条第2項

参議院議員の定数は242人とし、そのうち、96人を比例代表選出議員、146人を選挙区選出議員とする。

その242名の議員がどのように決定されるのかを見ます。絵を見てください。

日本の参議院選挙制度

参議院議員選挙には2つの選出方法があります。それは、「選挙区選出」及び「比例代表選出」です。選挙区から146名、比例代表選挙区からは96名が当選します。

まずは選挙区については原則として大選挙区制を採用しています。選挙区の中には1名というところもありますが、2名以上の候補者を当選させる選挙区もあります。だいたい都道府県ごとに選挙区が設定されていますが、一票の格差を解消するために、2つの都道府県にまたがって1人選出されるという選挙区も存在します。選挙区から当選する議員は全部で146名いらっしゃいますが、参議院議員は3年ごと半数が改選されます。したがって、選挙ごとに146議席の半分の73議席をめぐって選挙戦が繰り広げられるわけです。

次に比例代表選挙についてなのですが、こちらも衆議院と同様負けず劣らず複雑です。

  1. 各政党で候補者を決め、立候補者名簿を作成する。事前に順位はつけない
  2. 有権者が政党または候補者名簿に書かれている個人に投票する。
  3. 個人名が書かれた票はその者が所属する政党の得票となる。そして、政党の総得票数に基づいてドント方式により、 各政党の「当選人数」が決まる。
  4. 個人票の得票数に応じて順位付けされ、「当選者」が決定する

あらかじめ名簿の中で順位を付けない比例代表制度なので、非拘束名簿式比例代表制(ひこうそくめいぼしきひれいだいひょうせい)と呼ばれています。

スペインの選挙制度

スペインにおける下院の選挙制度

スペインの下院議員の定数は、スペイン憲法において次のように定められています。

スペイン憲法第68条第1項

El Congreso se compone de un mínimo de 300 y de un máximo de 400 Diputados, elegidos por sufragio universal, libre, igual, directo y secreto, en los términos que establezca la Ley.

下院は、法律が定める条件において、自由、平等、直接及び秘密の普通選挙により選出された最低300名最高400名の議員でこれを構成する。

憲法においては、「下院の定数は300議席から400議席の間で定めましょう」というように幅を持たせて規定がなされていて、具体的には「選挙制度に関する組織法 (Ley Orgánica 5/1985, de 19 de junio, del Régimen Electoral General、スペインでは一般的にLOREGと表記される)」という法律の第162条第1項に次のような条文で定めています。

選挙制度に関する組織法 (LOREG)第162条第1項

El Congreso está formado por trescientos cincuenta Diputados.

<和訳>

下院は350名の議員によって構成される。

つまり下院の定員は350名です。

ではその下院議員はどのように選出されるのでしょうか。

スペインには50個の県 (Provincia)が存在しますが、まず県ごとに2議席割り振ります。さらに、北アフリカにあるセウタ (Ceuta)とメリリャ (Melilla)という自治都市 (Ciudad Autónoma)にも1議席ずつ議席が割り当てられます(スペイン憲法第68条第2項、「普通選挙制度に関する組織法 (LOREG)」第162条第2項)。これで、2議席×50県+1議席×2自治都市の102議席は確定です。そして残りの248議席(350議席-102議席)は、人口比例によって配分されます。具体的な計算方法は、「選挙制度に関する組織法 (LOREG)」の第162条第3項に規定されています。これに基づいて計算されたものが下の表です。2016年下院議員選挙の際の各選挙区の定数です。

2016年下院議員選挙都道府県別議席配分表

議員を選ぶ方法は、厳正拘束名簿式比例代表制を採用しています。あらかじめ当選させたい候補者の名前を書いた名簿を作ってそれをもとに比例配分する点において、日本の衆議院議員総選挙の比例代表制と同じです。配分の方法がドント方式である点も同様です(「選挙制度に関する組織法 (LOREG)」第163条第1項)。しかし、厳正拘束名簿式比例代表とは立候補者名簿に重複なく順位を記載するもので、日本が採用している単純拘束式比例代表(立候補者名簿に立候補者ごとに順位が記載されるため、運用するルールによって重複する順位を付与することがある。日本はこれを採用している)ものとは少々異なります。日本とスペインの違いという点でまとめると、次の2点をあげることができます。

  1. 重複立候補なる制度がない(そもそも、スペインは小選挙区制と合わせワザ1本という選挙制度ではない)
  2. 同順位で名簿に候補者の名前を書けない。

といった点です。

なお、自治都市の2つの選挙区については、もともと1議席しか配分されていないために得票数の1番多い候補者しか当選することができないので、ここだけは例外的に事実上小選挙区制を採用しているといってもよいでしょう(「選挙制度に関する組織法 (LOREG)」第163条第2項)。

スペインにおける上院の選挙制度

スペイン上院の選挙制度について解説しましょう。大まかな内容は、スペイン憲法第69条第2項から第5項にかけて規定されていますが、その内容を整理してお話しましょう。

スペイン上院には、直接選挙で選ばれる議員と間接選挙によって選ばれる議員が存在します。

選挙区選出議員(直接選挙)

まず、直接選挙で選出される議員についてご説明します。彼らは合計で208名存在します。以下、その内訳を憲法の条文に沿ってご説明します。

  • 各県(注:イベリア半島にある県を指す)ごとに4名の上院議員を選出する(スペイン憲法第69条第2項)→4名×47県=188議席
  • 大島嶼(グラン・カナリア島、マヨルカ島及びテネリフェ島)においては、各島を一選挙区として、それぞれで3名の上院議員を選出する(スペイン憲法第69条第3項) →3名×3選挙区=9議席
  • その他の島嶼及び島(イビサ島、フォルメンテーラ島、メノルカ島、フエルテベントゥーラ島、ラ・ゴメーラ島、エル・イエロ島、ランサローテ島及びラ・パルマ島)においては、各島を一選挙区として、それぞれで1名の上院議員を選出する(スペイン憲法第69条第3項) →1名×7選挙区=7議席
  • 自治都市(セウタ及びメリーリャ)については、それぞれ2名の上院議員を選出する(スペイン憲法第69条第4項) →2名×2自治都市=4議席

投票方式は、大部分の選挙区では制限連記制が採用されています。つまり、選挙人が選挙区の定数より少ない複数の票を投じる投票制度のことです。こうすることにより、少数のグループ(政党)からも選出されやすくなります。スペイン上院議員選挙にあてはめてみます。

  • イベリア半島にある各県の選挙区は3名の連記投票(選挙人1人で3名選べる)が可能
  • 大島嶼の3選挙区及び自治都市の2選挙区については2名の連記投票(選挙人1人で2名選べる)が可能
  • その他の島嶼については1名の単記投票(選挙人1人で1名選べる)が可能
自治州任命議員(間接選挙)

スペイン上院は「地方を代表する機関 (Cámara de Representación Territorial)」であることから、スペインに17地域ある自治州議会 (Asambleas de las Comunidades Autónomas)の任命 (designados)によって上院議員が選出されるという制度が存在します。

 

以下、スペイン憲法の条文を見てみましょう。

<スペイン憲法第69条第5項>

Las Comunidades Autónomas designarán además un Senador y otro más por cada millón de habitantes de su respectivo territorio. La designación corresponderá a la Asamblea legislativa o, en su defecto, al órgano colegiado superior de la Comunidad Autónoma, de acuerdo con lo que establezcan los Estatutos, que asegurarán, en todo caso, la adecuada representación proporcional.

自治州は、さらに1名の上院議員を選任し、また各々の自治州の人口百万人につき、もう1名選任するものとする。この選任は、すべての場合において、適切な比例代表を保障する条例が定めるところに従い、自治州の立法議会またはこれを欠くときはその最高合議機関がこれにあたる。

2016年に実施された上院議員選挙では自治州任命議員は58名存在し、上院議員は直接選挙によって選ばれた議員とのトータルで266名存在します。

まとめ

最後に、日本とスペインの選挙制度についてまとめてみたいと思います。(2017年10月現在)

日本 スペイン
定員 衆議院 475名 小選挙区選出 295名 350名
比例代表選出 180名
参議院 242名 選挙区 (都道府県) 146名 266名 選挙区選出 208名
比例代表選挙選出 96名 自治州議会選出 58名
選挙制度 衆議院 小選挙区比例代表並立制 拘束名簿式比例代表制
参議院 非拘束名簿式比例代表制 大選挙区制(制限連記制)及び自治州議会による選出
解散 任期 衆議院 あり 4年 あり 4年
参議院 なし 6年 あり 4年

 

国が持つ歴史や文化によって法制度も大きく異なります。ですから、「日本では…」「スペインでは…」という「出羽守(でわのかみ)」をやっているだけでは外国法研究の意味がありません。比較してその背景に迫り、より自国の法を知る手がかりとするための外国法研究でありたいものです。

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上で示したのは、日西法制度比較のほんの入り口にすぎません。書籍や紀要またはネットを活用し、自分で調べて時には自分の足で歩いて目で見て回って、より深いレベルで学問を発展させたいものですね。

 

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