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目次
本稿は、「スペインの地方自治制度」について初めて学ぶ人のために編纂されたものである。
スペインと言えば、「情熱の国」であるとか「温暖で暖かい気候」であるというイメージが一般的に付きまとっているが、現実は決してそうではなく、確かに温暖で暖かい地方はあるものの、国の5分の2はメセタと呼ばれる台地が占め、ヨーロッパではスイスに次いで最も山の多い国なのである(平均海抜が約600mである)。
スペインを取り巻く環境を見ても、北東部にはフランスとの国境には「ピレネー山脈」があり、南にはアフリカ大陸を隔てるジブラルタル海峡がある。こういった環境の中、古くから多くの民族がスペインのあるイベリア半島に流入してきており、フェニキア人やローマの属州ヒスパニア、イスラームの文化も入り、大航海時代にはアメリカ大陸からヨーロッパには今までにはなかった多くの食べ物や文化が流入し、厳しい自然環境の中で、それぞれが今日のスペインを特徴付ける要素となっていった。
![[スペインの国旗]](../pic/spainflag_L.gif)
[スペインの国旗]
このように様々な人やモノがスペインに流入したのであるが、同時にそれは様々な要素からスペインという国が成り立っているということも意味する。それは現在掲げられているスペインの国章旗にも表れている。真ん中の王冠のかかった国家紋章は、かつてスペインにあった「国」を意味している。王冠の被さっている盾には次のような意味がある。右上の「獅子」は「レオン王国」(スペイン北西部。914年成立、1230年カスティーリャ王国と最終統合) を指し、左上の「城」は「カスティーリャ王国」(スペイン中央部、マドリを中心とする。930年成立。1469年女王イサベルがアラゴンのフェルナンド王子と結婚、1479年スペインとしてまとまる)を指し、左下の黄色に4本の赤筋は「アラゴン王国」(スペイン東部、バルセロナを中心とする。1035年独立、1137年カタルーニャと共同統治を開始。1469年王子フェルナンドがカスティーリャの王女と結婚、1479年スペインとしてまとまる)を、右下の鎖は「ナバーラ王国」(スペイン北東部。820年成立、1512年カスティーリャ王国に併合)を、そして最下部にある小さな「ざくろ」は「グラナダ王国」(スペイン南部。1238年に建国されたスペイン最後のイスラム教国、1492年征服される) を指す。

[スペイン国内で特に個性の強い文化を持った地域]
(ガリシア地方・バスク地方・カタルーニャ地方)
イベリア半島で「レコンキスタ(国土回復運動)」が行われていた15世紀頃に、最も勢いのあったイベリア半島中央部で勢力を誇っていたカスティーリャ王国のイサベル王女と、イベリア半島東部から南部沿岸の地中海を征服していた海洋国家であった「アラゴン連合王国」の皇太子のファラン(スペイン語名で「フェルナンド」)が結婚し(1469年)、「カスティーリャ王国」と「アラゴン連合王国」が共存する形でイベリア半島にあったグラナダ王国を倒し、「スペイン黄金時代」の幕開けを向かえた。よく、両王の結婚は「スペインの統一」を意味するといった記述を多く見かけるが、現実は決してそうではなく、依然として両国とも「存在」しており、単に国のトップ同士の人的な結びつきがあったにすぎなかったのである (両者の仲はよく、国家レベルにおいても、署名はイサベルが先で国家紋章はアラゴン・カスティーリャ王国が先というような取り決めがなされ、お互いの王国の制度等、妥協をしながら交流を図っていたという)。
この後次第にスペインは「カスティーリャ化」されていくのであるが、それが決定的になったのは、1701年の「スペイン王位継承戦争 (Guerra de Sucesión)」であった。当時のスペインの国王はハプスブルク家のカルロス2世であった。カルロス2世は、病弱で、性的に不能で嫡子を設けることができなかった。この頃、王の異母姉はフランス・ブルボン王朝のルイ14世(太陽王)に嫁ぎ、妹は神聖ローマ帝国皇帝のハプスブルク家のレオポルト1世に嫁いでいた。カルロス2世が死亡し、その遺言には、「ルイ14世の孫のフィリップ」を跡継ぎに指名すると書いてあった。しかし、フランスの領土拡大を恐れたオーストリア、イギリス、オランダは直ちに神聖ローマ帝国皇帝のレオポルト1世の子のカール大公を跡継ぎにすることを主張し、スペインの王位継承をめぐる戦争が勃発したのである。結果はブルボン王朝側の勝利。ここでブルボン・スペインが誕生した。
ブルボン・スペインは、フランスと同じように厳しい中央集権を敷いた。スペイン国内で最後までブルボン家に対抗してきたカタルーニャ地方に対しては特に厳しい態度で臨んだ。州政府が廃止され、地方組織も廃止され、カタルーニャ独自の法律や特権も廃止された。カスティーリャ語(スペイン語)の使用を義務付けた。こうして、カタルーニャ地方に住む人々は中央政府(カスティーリャ)に対して大きな不信感を持つようになる。この後、フランコ時代などを経て現在に至るわけであるが、この間も各地方の市民や文化は多くの不利益を受けることになった。
1978年に成立したスペイン憲法は、憲法第2条でスペインの国家としての統一性と国家を構成する地方の自治権を認めることを述べている。
La Constitución se fundamenta en la indisoluble unidad de la Nación española, patria común e indivisible de todos los españoles, y reconoce y garantiza el derecho a la autonomía de las nacionalidades y regiones que la integran y la solidaridad entre todas ellas.
憲法は、すべてのスペイン人の共通且つ不可分の祖国たるスペイン国のゆるぎなき統一に基礎を置き、これを構成する民族及び地方の自治権並びにこれら全ての間の結束を承認し、且つ保障する。
この他、憲法の本文だけでも19条(全169条中)にのぼり、憲法は「地方自治」について手厚く保護している。地方の弾圧の歴史があったからこその保護であるといえる。
本稿では、現行憲法で保護されている「地方の多様な文化」を具体的にどのようなシステムで法律上保障しているのかを概観していくことにする。つまり、「地方自治制度」について以下概観していきたいと思う。
なお、本稿を執筆するにあたり、ここまでスペインの法制度についてご教示していただいた南山大学法科大学院の黒田清彦教授に対して、この場を借りて、厚く御礼申し上げたい。
スペインの地方自治制度は、憲法上、次のようなものが設けられている (憲法第140条・141条・143条)。すなわち、「市町村 (Municipio)」、「県 (Provincia)」である。市町村の数は8109団体であり(2004年現在)、県は50県存在する。
また、スペインは、後述するように、地方によって独自の文化圏を形成しており、「自治州 (Comunidades Autónomas)」が設立できることが憲法上に明記されている。
「市町村 (Munincipio)」は、日本のように人口の規模等によって「市」「町」「村」というように呼称は変わらない。ただ、「国の基礎的自治行政単位 (Entidades Básicas de la Organización Territorial del Estado)」で、地方行政の最小単位であり、自治が保障され、完全な法人格を有している。この点、日本の「市町村」と同じであり、「Munincipio」というスペイン語訳を「市町村」としたのである。住民にとって最も身近な存在であるといえる。
「県 (Provincia)」は、大きく分けると2つの機能がある。1つは、国の一般行政目的を果たすための行政区画であるという側面がある、という点である。もう1つは、県内の「市町村」が行う各種行政サービスの連携や「市町村」では補えきれない行政サービスの供与、その他支援を行うという働きがある。「スペインにおける地方自治の中間管理職」にあたる存在であると形容すると分かりやすいであろう。
また、その他憲法上では直接定められていないものの、「地方制度基本法 (Ley 7/1985, de 2 de abril, Reguladora de las Bases del Regímen Local)」において、「市町村」が自らの権限内の特定業務を共同で行うために自発的に作る広域行政組織である「市町村共同体 (Mancomunidades Munincipios)」(構成する「市町村」は同じ県内に属する必要はないが、同じ自治州に属さなければならない)や、「広域区 (Comarca)」(市町村よりは広範囲であるが県よりは狭い)などの制度が別途法律によって保障されている。
スペインの「市町村」は、「国の基礎的自治行政単位 (Entidades Básicas de la organización territorial del Estado)」である(地方制度基本法第1条第1項)。スペインの「市町村」の数は、8109団体である(2004年1月現在)。日本の「市町村」の数と比較すると、スペインの団体数は日本のそれよりも約2.5倍になる。
| - | スペイン | 日本 | |||
| 人口規模 | 市町村数 | 割合(%) | 市町村数 | 割合(%) | |
| 50人未満 | 328 | 4% | 1 | 0% | |
| 50人以上 | 100人未満 | 617 | 8% | 0 | 0% |
| 100人以上 | 250人未満 | 1632 | 20% | 2 | 0% |
| 250人以上 | 500人未満 | 1247 | 15% | 5 | 0% |
| 500人以上 | 1000人未満 | 1095 | 14% | 42 | 1% |
| 1000人以上 | 2000人未満 | 969 | 12% | 114 | 4% |
| 2000人以上 | 5000人未満 | 1004 | 12% | 559 | 17% |
| 5000人以上 | 10000人未満 | 535 | 7% | 834 | 26% |
| 10000人以上 | 20000人未満 | 343 | 4% | 700 | 22% |
| 20000人以上 | 50000人未満 | 207 | 3% | 520 | 16% |
| 50000人以上 | 100000人未満 | 74 | 1% | 224 | 7% |
| 100000人以上 | 200000人未満 | 34 | 0% | 122 | 4% |
| 200000人以上 | 500000人未満 | 18 | 0% | 84 | 3% |
| 500000人以上 | 6 | 0% | 23 | 1% | |
| 合計 | 8109 | 100% | 3230 | 100% | |
| 2004年現在 | 2000年現在 | ||||
日本とスペインの「市町村」の規模を人口という観点から比較すると、次のようなことが分かってくる。
ちなみに、スペインにおいて人口50万人以上の都市はわずか6つしかない。内訳は、マドリー(310万人)、バルセローナ(158万人)、バレンシア(79万人)、セビーリャ(70万人)、サラゴサ(63万人)、マラガ(54万人)である。参考までに、日本のトップ6は降順で、東京23区(813万人)、横浜市(343万人)、大阪市(260万人)、名古屋市(217万人)、札幌市(182万人)、神戸市(149万人)である。
上記の考察からも分かるように、スペインの「市町村」は一つ一つの「市町村」の規模が小さく、また「市町村民」から得られる税収も少なく経済力も弱いため、「市町村」が自発的に「市町村共同体 (Mancomunidades Munincipios)」をつくり、上下水道・ゴミ処理・消防・福祉・機械の共同所有等の業務を行っている。もちろん、「市町村」の権限全てを「市町村共同体」に委任することはできない。「市町村共同体」は、同一県内である必要もなく、また地理的にも隣接している必要はないが、同一の自治州内でなければならない (地方制度基本法 (Ley 7/1985, de 2 de abril, Reguladora de las Bases del Regímen Local)第44条)。スペイン全土には950余りの「市町村団体」が存在しており、よく利用されている制度のようである。
市町村における統治機構は、「市町村議会 (Ayuntamiento)」であり、それは原則として「市町村長 (Alcalde)」及び「市町村議会議員 (Concejales)」から成る。注意すべき点は、「市町村議会 (Ayuntamiento)」とは、本会議及び執行機関の両方を含む概念である点である。つまり、「市町村議会 (Ayuntamiento)」は、立法機関を意味するのと同時にまた行政機関を意味するのである。

[市町村選挙の仕組み]
「市町村議会議員 (Concejales)」は、直接普通選挙によって選出される。「名簿式比例代表制度」が採られている。当選した市町村議会議員のメンバーは「議会 (Pleno)」を開き、そこで絶対多数決 [出席議員の過半数ではなく、全議員の過半数の得票が必要]により市町村議長を選出する。つまり、「市町村議会議長」は「市町村長 (Alcalde)」でもある。議員の任期は4年である。選挙権及び被選挙権は18歳から有する。
「市町村」の統治機構は、人口規模によって、細かい部分で異なっている。
市町村の権限については次のようなものがある。地方自治基本法第26条によると、まずすべての市町村においては、街灯・墓地・家庭廃棄物の収集・公道の維持・上下水道・道路整備、舗装・飲食品の管理がある。次に人口に応じて与えられる権限が異なるので、人口別に紹介してみたい。人口5000人以上の市町村では、公園・図書館・市場・ゴミ処理などを行なうことができる。人口2万人以上の市町村では、広域災害防止・福祉サービスの提供・火災予防と消火・スポーツ施設の設置などが行政サービスとしてできると言われている。人口5万人以上の市町村になると、公共都市交流や環境保全などといったことも行政サービスとしてできるようになる。
スペイン国内には現在50個の「県 (Provincia)」が存在する。
「県」の役割については、憲法第141条に明記されている。憲法の条文を参考に、2つの役割について抽出してみた。
憲法で上記のように定められていることを受けて、地方制度基本法第36条では「県」の権限を次のように規定している。
また、この他にも、
といった役割も担っている。
「県」の統治機構は「県議会 (Diptación Provincial)」である。そして、概して見ると、「県議会議長 (Presidente de la Diptación Provincial)」「常務理事会 (Comisión de Gobierno)」及び「本会議 (Pleno)」から成る。

[県議会の仕組み]
ここで、「県」の統治機構を理解する際に重要なポイントを2つ挙げておきたい。1つは「本会議」を構成する「県議会議員 (Diptados Provinciales)」について、もう1つは「県議会議長 (Presidente de la Diptación Provincial)」の役割についてである。
まず、「県議会議員 (Diptados Provinciales)」の住民の直接選挙は存在しない。「県議会議員」は、県内の市町村議会議員から間接選挙によって選出される。つまり、県議会議員は、市町村議会議員選挙における得票率に応じて、県議会で議席を与えられるのである。見方を変えれば、「県議会議員は、すべていずれかの市町村議会議員である。」と言えるのである。
次に、「県議会議長 (Presidente de la Diptación Provincial)」であるが、原則として県議会議員の中から絶対多数決によって選ばれる。「県議会議長」の役割は、地方制度基本法第34条によると次のようなものが列挙されている。
つまり、「県議会議長」は立法機関の長としての役割と行政機関の長としての役割を担っているのである。そういった意味においては、「市町村議会議長 (Alcalde)」と同様の役割を果たしているといってもよいであろう。
今まで概観してきた「地方団体 (Entidades Locales)」と「自治州 (Comunidad Autónoma)」の性質的な違いはどの点にあるのだろうか。主な点を挙げてみたい。
といった性質を持っている。
自治州は、憲法第143条第1項にも規定で、「歴史的、文化的及び経済的性格を共有して隣接する県、島嶼 (とうしょ)ならびに歴史的な地方団体を有する県は、自治を求め、かつ、本編(註;国の地方組織)および各々の条例に定められたところに従い、自治州を構成することができる」とあり、「県」や「市町村」などのように、憲法上必要であるということは書かれていない。したがって、自治州を設立するのは「県」や「島嶼」の自由である。
| - | 地方団体 (県・市町村・島嶼など) |
自治州 |
| 必置機関か? | 必置機関である | 必置機関でない |
| 制度は全国一律的か? | 全国一律的である | 全国一律的でない |
| 機関の性質 | 行政的意味合い | 政治的意味合い |
| 立法発議権 | ない | あり |
「県」が「国の活動を遂行するための地域区分(憲法第141条)」とあるように、「地方団体」の性質は国の行政政策的な性質がある。それに対して、自治州は自ら自治を求めて作る組織であることから、国に対して「モノ言う」存在として認めており、政治的意味合いの濃い組織であるといえよう。
En el ejercicio del derecho a la autonomía reconocido en el artículo 2 de la Constitución, las provincias limítrofes con características históricas, culturales y económicas comunes, los territorios insulares y las provincias con entidad regional histórica podrán acceder a su autogobierno y constituirse en Comunidades Autónomas con arreglo a lo previsto en este Título y en los respectivos Estatutos.
憲法第2条で認められた自治権の行使において、共通の歴史的、文化的及び経済的性格を有する隣接県、島嶼地域並びに歴史的一体性を有する県は、自治を求めかつ本編(註: 国の地方組織)および各々の条例に定められたところに従い、自治州を構成することができるものとする。
本稿の「はじめに」でも述べたとおり、イベリア半島には様々な国が存在して独自の文化を作り上げてきたが、「スペイン王位継承戦争」以来、スペインの「カスティーリャ化」が進むことで、カスティーリャ以外の文化は迫害を受け、時には激しい弾圧を受けて、幾度となく危機をむかえてきた。そして、それに対して激しく抵抗してきた。現憲法で、各地の独自の文化を保障することで、「スペイン」という国家を守る役割を果たしている (憲法第2条においても「憲法は、すべてのスペイン人の共通且つ不可分の祖国たるスペイン国のゆるぎなき統一に基礎を置き...」という文言があるのがその証拠)。「自治州」の設立を認めることもまた、そのツールであるといっても過言ではないであろう。
自治州の設立方法には大きく2種類ある。憲法第143条第2項による方法と憲法第151条による方法である。
まず、憲法第143条第2項による方法を概観したい。
自治のための手続の発議は、当該の全ての県議会または当該の島際機関および各々の県又は島の市町村の3分の2にしてその人口が各々の県又は島の選挙人の過半数を占める市町村がこれに該当する。当該の地方団体の何れかにより、自治権請求の最初の議決が採択されてより6ヶ月の期間内に、これを充足することを要するものとする。なお、自治州設置の発議が成らなかった場合については、5年を経過しなければ再び発議をすることはできない。
La iniciativa del proceso autonómico corresponde a todas las Diputaciones interesadas o al organo interinsular correspondiente y a las dos terceras partes de los municipios cuya población represente, al menos, la mayoría del censo electoral de cada provincia o isla. Estos requisitos deberán ser cumplidos en el plazo de seis meses desde el primer acuerdo adoptado al respecto por alguna de las Corporaciones locales interesadas.
次に、憲法第151条による方法を概観したい。
自治州設置の発議が、第143条第2項の期間内に、各々の県議会又は島際機関による議決の他、当該の各々の県の市町村の4分の3にして各々の県の選挙人の過半数を占める市町村により採択され、かつ、その発議が、組織法の定める条件において、各々の県の選挙人の絶対多数の賛成票を以って、住民投票による承認を得た時は、第143条第2項にいう5年間の期間を経過することを要しない。
No será preciso dejar transcurrir el plazo de cinco años, a que se refiere el apartado 2 del artículo 148, cuando la iniciativa del proceso autonómico sea acordada dentro del plazo del artículo 143, 2, además de por las Diputaciones o los órganos interinsulares correspondientes, por las tres cuartas partes de los municipios de cada una de las provincias afectadas que representen, al menos, la mayoría del censo electoral de cada una de ellas y dicha iniciativa sea ratificada mediante referéndum por el voto afirmativo de la mayoría absoluta de los electores de cada provincia en los términos que establezca una ley órganica.
ここで、日本にはない独特な「法律の種類」がこの条文で出てきたので、解説を加えておきたい。それは「組織法」である。「組織法」とは、「基本的権利ならびに公的自由の具体化、自治条例および総選挙制度を承認する法律ならびに憲法に定められたその他の法律」のことををいう (憲法第81条)。そして、その決議方法は、通常の法律案を可決する場合 (出席議員の過半数を得れば法律案を可決)とは異なり、法律案を可決するには議員の「頭数」の過半数が必要になるという法律である。
ここで重要なポイントをまとめておきたい。
| - | 憲法第143条第2項 | 憲法第151条 |
| 設置方法 | 各県議会における議決の他に、全市町村議会の3分の2以上の賛成によって申請がなされる。 | 自治州を構成する全市町村の議会で4分の3以上の賛成が得られれば、その地方の住民投票によって自治州設置の可否を問う。 |
| 自治州設立時 | 憲法第148条第1項に列挙される権限のみしか付与されない。 | 憲法第148条第1項に列挙される権限よりも広い権限を有する。 |
| 自治州設立後 | 設置後5年が経過した時点で自治条例 (Estatuto de Autonomía)を改正して権限を拡大できる。 | 自治州の自治州条例 (Estatuto de Autonomía)改正によらず、国は組織法によって自らの属する権限のうち委任に適したものを自治州に委任できる。 |
いずれの設置方法であっても、自治州の設置には自治条例 (Estatuto de Autonomía)の制定が不可欠である (憲法第143条第1項)。その後、各々の自治州条例は、自治州を構成する県の県議会議員及び当該の県から選出された衆議院議員及び参議院議員からなる会議において起草された自治州条例の草案が国会において法律として承認されたものであり 国会において「組織法 (Ley Orgánica)」として承認されなければならない。 (憲法第81条、憲法第146条、憲法第147条第1項)
1975年11月に全ての国家権力を掌握していたフランコ (Francisco Franco Bahamonde)が死亡した後に政権を握った民主中道連合 (UCD: Unión de Centro Democrático)は、自由化政策の一環として、スペイン各地の自治権要求に応じる方針を採ってきた。
時系列的に、憲法制定前の自治州設置の歴史を見ていくと、
とあり、憲法制定前からすでにスペインは一種の「連邦制」の国家が誕生してしまうのではないかという危惧が一部から起こった。
そこで、憲法に「経過規定 (DISPOSICIONES TRANSITORIAS)」を設け、「暫定自治州の最高合議体が憲法制定後3年以内に自治州認定の申請をしなければならない。そうしなければ、暫定自治機関は解消したものとみなす (経過規定第7c号)」とし、一定のハードルを設けた。
憲法施行後、各暫定自治州は憲法第143条第2項、第151条及び経過規定に則り、自治州獲得に動き出した。13の暫定自治州が憲法第143条第2項に基づく自治州設置の手続きを、カタルーニャ、バスク、ガリシア及びアンダルシアの各暫定自治州は、憲法第151条に基づく自治州設置の手続きを開始した。但し、カタルーニャ、バスク及びガリシアの3つの州は、フランコによる独裁政治の前までに効力があった「1931年共和国憲法」下において、住民投票において「自治条例」を承認したという経緯があり、経過規定第2号に基づき、暫定州議会の絶対多数による合意及びその政府通告という迅速かつ簡便な手続のみで直ちに自治州条例 (Estatuto de Autonomía)を制定した。カタルーニャ、バスク及びガリシアの各自治州を「歴史的自治州」と呼ぶ。
各自治州が承認された時の組織法名は下記の表のようになっている。掲載順は、組織法によって設置が承認された年代順・アルファベット順になっている。
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設置方法 |
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Ley Orgánica 3/1979, de 18 de diciembre, de Estatuto de Autonomía para el País Vasco | 151条+経過措置第2号 |
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Ley Orgánica 4/1979, de 18 de diciembre, de Estatuto de Autonomía de Cataluña | 151条+経過措置第2号 |
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Ley Orgánica 1/1981, de 6 de abril, de Estatuto de Autonomía para Galicia | 151条+経過措置第2号 |
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Ley Orgánica 6/1981, de 30 de diciembre, de Estatuto de Autonomía para Andalucía | 151条 |
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Ley Orgánica 8/1981, de 30 de diciembre, de Estatuto de Autonomía para Cantabria | 143条 |
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Ley Orgánica 3/1982, de 9 de junio, de Estatuto de Autonomía de La Rioja | 143条 |
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Ley Orgánica 4/1982, de 9 de junio, de Estatuto de Autonomía para la región de Murucia | 143条 |
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Ley Orgánica 7/1982, de 9 de junio, de Estatuto de Autonomía para Asturias | 143条 |
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Ley Orgánica 5/1982, de 1 de julio, de Estatuto de Autonomía
de la Comunidad Valencia. Ley Orgánica 12/1982. de 10 de agosto, de transferencia a la Comunidad Valencia de competencias en materia de titularidad estatal. |
143条 |
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Ley Orgánica 8/1982, de 10 de agosto, de Estatuto de Autonomía de Aragón | 143条 |
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自治州 |
Ley Orgánica 9/1982, de 10 de agosto, de Estatuto de Autonomía de Castella-La Mancha | 143条 |
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Ley Orgánica 10/1982, de 10 de agosto, de Estatuto de Autonomía
de Canarias Ley Orgánica 11/1982, de 10 de agosto, de transferencias commolementarias a Canarias |
143条 |
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Ley Orgánica 13/1982, de 10 de agosto, de Reintegración y Amejoramiento del Regímen foral de Navarra | 経過措置第4号 |
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自治州 |
Ley Orgánica 1/1983, de 25 de febrero, de Estatuto de Autonomía de Aragón | 143条 |
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自治州 |
Ley Orgánica 2/1983, de 25 de febrero, de Estatuto de Autonomía para las Islas Baleares | 143条 |
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Ley Orgánica 3/1983, de 25 de febrero, de Estatuto de Autonomía de la Comunidad de Madrid | 143条 |
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自治州 |
Ley Orgánica 4/1983, de 25 de febrero, de Estatuto de Autonomía
de Castella-León. Ley Orgánica 5/1983, de 1 de marzo, por la que se aplica el artículo 144 c) de la Constitución a la provincia de Segovia |
143条 |
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Ley Orgánica 1/1995, de 13 de marzo, de Estatuto de Autonomía de Ceuta | 143条 |
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Ley Orgánica 2/1995, de 13 de marzo, de Estatuto de Autonomía de Melilla | 143条 |
上記のリストについて、3つのポイントをあげたいと思う。1つはナバーラ州について、2つ目はセウタ及びメリーリャについて、3つ目はバレンシア州及びカナリアス州についてである。
まず1つ目のナバーラ州についてであるが、他の自治州とナバーラ州との間で決定的に違うのは、自治州条例 (Estatuto de Autonomía)という言葉が組織法名の中に存在していないこと、換言すれば「自治州条例」が「自治州」なのに存在しないことと、憲法第143条第2項でも憲法第151条でも経過措置第2号でもない方法で自治州の設置が行われていることである。

[ナバーラ自治州の州旗と
スペイン紋章(右下の鎖に注目: ナバーラ王国)]
ナバーラ州は、自治州条例の代わりに、「Reintegración y Amejoramiento del Regímen foral de Navarra (ナバーラ特別法制区域における再統合とその改善)」と呼ばれるものがあり、これが自治州条例を代替するものである。さすれば、なぜ自治州条例の代わりに「ナバーラ特別法制区域における再統合とその改善」という名前を付けて、ナバーラ州の自治権を認めているのであろうか。それは、"Reintegración y Amejoramiento"という言葉に着目すると分かるとおり、「再統合」だの「改善」だのという言葉は、あたかも元々その場所に「自治権」が存在しているかのように解釈することができるのであるが、実際に歴史的にも脈々と自治権を受け継いできている地域だからである。「ナバーラ」は、8世紀からフランコ時代においても中断されることなく現在に至るまで脈々と自治権を享受し続けているという土地柄で、実は法的にはスペインという国の中に「ナバーラ王国」が存在し、現在においても法律上は「王国」の位置づけなのである。そのため、ナバーラ州においては、「経過措置第4号」で、
ナバーラの場合において、そのバスク政務院またはこれに代わるバスク自治組織への併合のためには、本憲法第143条の規定に代えて、その発議権は、当該地方機関に属し、この機関が、その構成員の過半数により、併合の決定を採択するものとする。この発議が有効なためには、さらに、当該の地方機関の決定が、目的を明示して布告された住民投票により、有効投票の過半数を以て承認されることを要するものとする。
En el caso de Navarra, y a efectos de su incorporación al Consejo General Vasco o al régimen autonómico vasco que le sustituya, en lugar de lo que establece el artículo 143 de la Constitución, la iniciativa corresponde al Órgano Foral competente, el cual adoptará su decisión por mayoría de los miembros que lo componen. Para la validez de dicha iniciativa será preciso, además, que la decisión del Órgano Foral competente sea ratificada en referéndum expresamente convocado al efecto, y aprobado por mayoría de los votos validos emitidos.
という条項を特別に設け、「ナバーラ」については、カタルーニャやバスクなどの「歴史的自治州」以上に容易に憲法下で自治権を享受できる仕組みを整えたのである。
次に2つ目のセウタ及びメリーリャについてである。これら2つは、アフリカ (モロッコ)にある飛び地であること、面積・人口もセウタが22平方キロメートル・72000人で、メリーリャが12平方キロメートル・67000人しかないということ、及び歴史的にも大変特殊な領土である等の理由で、独自の特別自治権を有する市である。「自治市 (Ciudad Autónoma)」と呼ばれる。なお、衆議院憲法調査委員会の視察報告書には、「スペインには19の自治州が存在する」と書いてあるが、法的性格の観点からは間違いとはいえないが、正確には17の自治州が正しい。
最後の3つ目のバレンシア州及びカナリアス州についてである。これらは、法的には憲法第151条に規定されている設置方法で自治州が設置されているのだが、自治権の権限レベルに鑑みると、経過規定等を使わずに151条を適用して自治州を設置したアンダルシア自治州とおなじレベルに達しているので、実質的には憲法151条による設置であるとみなされることがある、という点である。
現在の自治州の状況をまとめてみた。リンクは各自治州の公式ホームページに行けるようになっている。言語は自治州によってまちまちであるが、カスティーリャ語(スペイン語)の他に公用語となっている言語や英語のページが併設しているところもあり、いずれも興味深い作りになっている。自治州条例 (Estatuto de Autonomía)が掲載されているウェブサイトが多いので、各々の自治州の自治州条例 (Estatuto de Autonomía)について調べるような場合は、ホームページをご覧になるとよいであろう。

[自治州地図 (スペイン内務省ホームページより)]
| 自治州旗 | 自治州名 | 州都 | 所属県名 | 人口 [千人] |
面積 [平方km] |
備考 |
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アストゥリアス自治州 | オビエド | アストゥリアス県 | 1074 | 10604 | |
| PRINCIPADO DE ASTURIAS | ||||||
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アラゴン自治州 | サラゴサ | ウエスカ県 サラゴサ県 テルエル県 |
1250 | 47720 | |
| ARAGÓN | ||||||
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アンダルシア自治州 | セビーリャ | アルメリア県 ウエルバ県 カディス県 グラナダ県 コルドバ県 セビーリャ県 ハエン県 マラガ県 |
7685 | 87559 | |
| ANDALUCÍA | ||||||
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イスラス・バレアレス自治州 | パルマ・デ・マヨルカ | バレアレス県 | 955 | 4992 | カタルーニャ語 |
| ISLAS BALEARES | ||||||
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エストゥレマドゥーラ自治州 | メリダ | カセレス県 バダホス県 |
1075 | 41634 | |
| EXTREMADURA | ||||||
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カスティーリャ・イ・レオン自治州 | バリャドリー | アビラ県 サモーラ県 サラマンカ県 セゴビア県 ソリア県 バリャドリー県 パレンシア県 ブルゴス県 レオン県 |
2493 | 94224 | |
| COMUNIDAD DE CASTILLA Y LEÓN | ||||||
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カスティーリャ・ラ・マンチャ自治州 | トレード | アルバセテ県 グアダラハラ県 クエンカ県 シウダッド・レアル県 トレド県 |
1849 | 79461 | |
| CASTILLA-LA MANCHA | ||||||
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カタルーニャ自治州 | バルセローナ | バルセローナ県 ヘローナ県 レリダ県 タラゴナ県 |
6813 | 32113 | カタルーニャ語 |
| CATALUÑA | ||||||
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カナリアス自治州 | サンタ・クルス・デ・テネリフェ ラス・パルマス・デ・グラン・カナリア |
ラス・パルマス県 サンタ・クルス・デ・テネリフェ県 |
1916 | 7447 | [州都は2都市を1年交代で交互に] |
| ISLAS CANARIAS | ||||||
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ガリシア自治州 | サンティアゴ・デ・コンポステーラ | オレンセ県 ラ・コルーニャ県 ルゴ県 |
2751 | 29575 | ガリシア語 |
| GALICIA | ||||||
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カンタブリア自治州 | サンタンデール | カンタブリア県 | 555 | 5321 | |
| CANTABRIA | ||||||
![]() |
マドリー自治州 | マドリー | マドリー県 | 5805 | 8028 | |
| COMUNIDAD DE MADRID | ||||||
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ナバーラ自治州 | パンプローナ | ナバーラ県 | 1295 | 10391 | バスク語 |
| COMUNIDAD foral DE NAVARRA | ||||||
![]() |
バレンシアーナ自治州 | バレンシア | アリカンテ県 カステヨン県 デ・ラ・プラーナ県 バレンシア県 |
4543 | 23255 | |
| COMUNIDAD VALENCIANA | ||||||
![]() |
バスク自治州 | ビトリア | アラバ県 ギプスコア県 ビスカヤ県 |
2115 | 7234 | バスク語 |
| Pais Vasco | ||||||
![]() |
ラ・リオハ自治州 | ログローニョ | ラ・リオハ県 | 294 | 5045 | |
| LA RIOJA | ||||||
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ムルシア自治州 | ムルシア | ムルシア県 | 1295 | 11314 | |
| REGION DE MURCIA |
表の左にあるのは「自治州旗」である。自治州旗については、憲法第4条第2項に規定がある。
Los estatutos podrán reconocer banderas y enseñas propias de las Comunidades Autónomas. Estas se utilizarán junto a la bandera de España en sus edificios públicos y en sus actos oficiales.
自治州条例は、その独自の旗及び旗章を認めることができるものとする。自治州旗及び自治州章は、その公共建造物およびその公式行事において、スペイン国旗と並び、これを用いるものとする。

[バレンシア県議会の写真]
上の写真は、「バレンシア県議会 (玄関には、「DIPTACIÓ PROVINCIAL DE VALÈNCIA」とバレンシア語で書かれたプレートがあった)」の入り口であるが、写真の右側にはスペイン国旗とバレンシア自治州の州旗が並列しているが、このように掲揚しなければならない。また、最近ではEUの旗も掲げられるケースが多い。
自治州の統治機構は、自治州自体の名称から立法機関や行政機関の名称に至るまで、自治州条例によって異なるが、共通するのは以下の部分である。
自治州の立法機関・議決機関である「自治州議会 (Asamblea Autonómica又はParlamento Autonómico)」と執行機関である「自治州内閣 (Gobierno Autonómico)」から成り、自治州統治機構を総称して「自治州統治機関 (スペイン語での呼称は各自治州によって異なるが、一般的にはInstitución de Autogobiernoなどと呼ばれる)」という。司法機関は、国の固有の権限であるため、自治州では設置できない。
また、自治州によっては、州の行政を監視して当局に対して助言や忠告を行なうオンブズマン (Defensor de Pueblo en las Comunidades Autónomas)の制度を設けたり(9つの自治州で実施)、州政府や公社の効率的・合理的な予算執行を行っているかどうかをチェックする会計院 (Tribunal de Cuentas)を設けているところもある(9つの自治州で実施)。
ここで、自治州統治機関についてもう少し詳しく見ていくことにする。
最初に自治州議会である。自治州議会は、一院制で任期は一律4年、選挙方式は比例代表制 (ドント方式)である。自治州議会の基本的機能は、
である。
次に自治州内閣である。自治州内閣も各自治州によって名称や機構も様々であるが、大まかに共通する部分を紹介したいと思う。
自治州首相は州を代表し、一方、州議会による首班指名選挙により州議会の信任の結果として選任され、国王から任命される。州首相が任命されると、州内閣のメンバー(大臣: Consejero)が選任される。
州内閣の権限としては、規則 (reglamentos)の制定、各種の独立機関や公社を有することができるが、外交機関を有することはできない。これは、後述するとおり、国の専管的権限であるからである。
ここでは、国と自治州の権限の関係について触れたいと思う。
まず、憲法第149条第1項にて、国の専管事項が列挙されている。裏から読めば、自治州はこれらの国の専管事項を行うことはできない。それを列挙すると、
がある。但し、上記のような「国の専管事項」であっても、性質上委任を適した国の権限は自治州に移管することも可能である (憲法第150条第2項)。例えば、教育に関する権限の移管や、カタルーニャ自治州やバスク自治州では医療や警察などの権限を移管している。しかしながら、権限の移管の状況は各自治州によって異なり、ある自治州で移管されている権限が別の自治州では移管されていないといったこともある。 なお、憲法第149条第1項で列挙されていない事項でも、自治州が自治州条例に列挙していない権限は国の権限になる(憲法第149条第3項)。
一方、自治州の基本的な権限は下記のようなものになる。
自治州の権限は、憲法第148条第1項に列挙される権限を基礎とし、国の専管事項である憲法第149条第1項に列挙されている権限を含まない含まないものであるが、前述したとおり、憲法第149条第1項に列挙されている事項があったとしても、性質上委任を適した国の権限は自治州に移管することも可能である (憲法第150条第2項)。
最後に、「県 (Provincia)」との関係について特記すべきことをあげておきたい。それは、自治州の中に1つの県しか存在しない場合である。そういった場合は「県議会」が存在せず、県の権能は自治州が行う。
ここでは、国と自治州と地方団体の関係について述べたいと思う。
まず、国は各自治州毎に「政府代表 (Delegado del Gobierno)」を1人派遣する。自治州における中央政府の代表であり、自治州内の国家行政を指揮し、「自治州又はその管内の地方団体の固有の行政」と「地方における国会行政」との調整を行う役割を持っている。政府代表は内閣総理大臣の指名に基づき、閣議勅令によって任免される。
政府代表は、博士号、修士号、工学士、建築士その他同等の資格を有する国家公務員、自治州公務員又は地方団体の公務員を、「政府代表補佐 (Subdelegado del Gobierno)」として任命する権限を持つ。政府代表補佐は各県に置かれているが、「1自治州=1県」の「県」には設置されない。
「政府代表」も「政府代表補佐」も、それぞれ自治州や県の機関ではない点は注意すべきである。
「スペインの地方自治制度」について初めて学ぶには、多少分量が多いかもしれないが、下記の練習問題を含めて熟読していただければ、ベーシックな知識をほぼきちんと把握したことができたと言っても過言ではないであろう。それだけ、密度の濃い内容にこの作品が仕上がったと自負している。
スペインの地方自治の概念や制度の大まかな内容を理解することで、昨今のスペインの情勢を理解するのに役立つと思う。本稿はその一助になれば幸いである。
筆編者: しるす
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Released on Apr. 01, 2002 [1st]
Released on Mar. 01, 2005 [2nd]
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