最高裁判所裁判官国民審査と衆議院総選挙の期日前投票の開始日の誤差があるってホント!?

安倍晋三首相が衆議院の解散を決めた。そして、昨日が総選挙の公示日となり、日本各地で選挙戦がスタートしたようである。

選挙の公示日は、次の通り、法律である程度決まっている。

スポンサーリンク

まずは公職選挙法の条文を引っ張ってみよう。

(総選挙)
第三十一条  衆議院議員の任期満了に因る総選挙は、議員の任期が終る日の前三十日以内に行う。
2  前項の規定により総選挙を行うべき期間が国会開会中又は国会閉会の日から二十三日以内にかかる場合においては、その総選挙は、国会閉会の日から二十四日以後三十日以内に行う。
3  衆議院の解散に因る衆議院議員の総選挙は、解散の日から四十日以内に行う。
4  総選挙の期日は、少なくとも十二日前に公示しなければならない。
5  衆議院議員の任期満了に因る総選挙の期日の公示がなされた後その期日前に衆議院が解散されたときは、任期満了に因る総選挙の公示は、その効力を失う。

上記の条文は、公職選挙法の第31条という条文で、ここには「少なくとも12日前には公示しなければならない」と記載されている。

原則として総選挙の期日に投票することになっているが、一定の条件を満たせば期日前投票を行うことができるのである。そのことを示しているのが下の公職選挙法第48条の2の条文である。

(期日前投票)
第四十八条の二  選挙の当日に次の各号に掲げる事由のいずれかに該当すると見込まれる選挙人の投票については、第四十四条第一項の規定にかかわらず、当該選挙の期日の公示又は告示があつた日の翌日から選挙の期日の前日までの間、期日前投票所において、行わせることができる。
  1. 職務若しくは業務又は総務省令で定める用務に従事すること。
  2. 用務(前号の総務省令で定めるものを除く。)又は事故のためその属する投票区の区域外に旅行又は滞在をすること。
  3. 疾病、負傷、妊娠、老衰若しくは身体の障害のため若しくは産褥にあるため歩行が困難であること又は刑事施設、労役場、監置場、少年院若しくは婦人補導院に収容されていること。
  4. 交通至難の島その他の地で総務省令で定める地域に居住していること又は当該地域に滞在をすること。
  5. その属する投票区のある市町村の区域外の住所に居住していること。

つまり、公示日の翌日から選挙の期日の前日までは期日前投票ができると書いてある。つまり、法的には、選挙の期日の11日前から1日前までの間に期日前投票ができるという解釈を行うことができるわけである。

さて、周知のとおりであるが、衆議院議員総選挙が行われる際には、最高裁判所裁判官の国民審査も行われる。 その証拠が、次に掲げる「最高裁判所裁判官国民審査法」の条文である。

第二条 (審査の期日)
  1. 審査は、各裁判官につき、その任命後初めて行われる衆議院議員総選挙の期日に、これを行う。
  2. 各裁判官については、最初の審査の期日から十年を経過した後初めて行われる衆議院議員総選挙の期日に、更に審査を行い、その後も、また同様とする。

最高裁判所裁判官の国民審査もまた、衆議院議員総選挙と同じく、期日前投票ができる規定が存在する。

第二十六条 (投票及び開票に関するその他の事項)
 この法律及びこれに基づいて発する命令に規定するもののほか、投票及び開票に関しては、衆議院小選挙区選出議員の選挙の投票(公職選挙法第四十九条第七項 及び第八項 の規定による投票に関する部分を除く。)及び開票の例による。ただし、同法第四十八条の二 の規定の例による場合においては、審査の期日前七日から審査の期日の前日までの間に審査の投票をしなければならない。

最高裁判所裁判官国民審査法の第26条にそれが示されており、国民審査の期日(=衆議院の総選挙の期日)の7日前から1日前まで期日前投票ができると書いてある。

ここで、もう一度両者を比較しておさらいしてみよう。

  • 衆議院議員総選挙の場合は、選挙の期日の11日前から1日前までの間に期日前投票ができる。
  • 最高裁判所裁判官国民審査の場合は、国民審査の期日(=衆議院の総選挙の期日)の7日前から1日前まで期日前投票ができる。

両者の起点がズレている。つまり、衆議院議員総選挙の期日前投票が始まってからの4日間は、最高裁判所裁判官国民審査が投票できないという事態になっているという問題が存在する。もし、この4日間に衆議院議員総選挙に投票した者は、再度国民審査の投票を行うためには投票所に行かなければならない不合理が起こるのである。

こういうこともあったせいで、前回の衆議院議員総選挙において、群馬県内の市町村において、「先に衆議院総選挙の期日前投票を済ませた有権者が国民審査の投票のため再度投票所を訪れた際に、投票所の職員がこの有権者に再び衆議院総選挙の投票用紙を渡して再度投票させるミスを犯した」という事件が起こっているのである。

なぜ両者の起点がズレているのか?という合理的な理由を考えてみても見当がつかない。なお、Wikipediaには、総務省の見解が次のように書かれている。

手書きで候補者名や政党名を記入する選挙の投票用紙と違って国民審査の投票用紙には審査の対象となる裁判官の氏名まで印刷する必要があり、国民審査の告示日は衆議院総選挙の公示日と同日で、告示日に審査の対象となる裁判官が確定してから投票用紙の印刷を開始するので印刷作業に時間がかかるため

だそうである。しかし、衆議院議員の解散時には既に国民審査の対象となる最高裁判所裁判官はだいたい明らかになっているわけなので、そんなに印刷に難儀するのだろうか?という疑問が沸く。

この両者の起点のズレは、先に述べたように、選挙管理委員会の事務作業にとっても大きなミスを起こす要因となるし、それによって主権者たる国民の権利を不当に害する蓋然性を高めることになるという意味で不合理だと思う。

スポンサーリンク


何とか法改正とはいかないものだろうか?

Follow me!

スペイン法入門講義

加代昌広研究所は、日本の制度に多く言及しながらスペイン法の基本を日本語で学べる稀有なコンテンツ「スペイン法入門講座」を提供しています。

このようなことが分かります!

  • 日本の天皇の皇位継承とスペインの国王の王位継承とはどのように違うか?

  • 日本とスペインの首班指名のプロセスにはどのような違いがあるのでしょうか?

  • 日本とスペインとで憲法に違反した法令や条約の審査の方法にはどのような違いがあるのでしょうか?

  • 日本とスペインとで地方自治制度にはどのような違いがあるのでしょうか?


ぜひ一度ご覧ください。