『法友南山』巻頭言(20号記念号)

巻頭言「あゆち」

今年度の『法友南山』は、久々に「委員長」の巻頭言を復活させた。これは『法友南山』が刊行20号をむかえ、委員長がご挨拶をするといえば聞こえがよいのかもしれない。しかし実際は単にぼくが「話し好き」だからという不純な動機で、学部長の巻頭言に続いてちょっと顔を出してみただけである。

ところで、題名の「あゆち」とは、「海から吹いてくる幸福の風」のことを意味し、それは南山大学がある「愛知県」の「愛知」と密接な関係があるのだという。徳川家康の九男で尾張藩主の徳川義直公が居城の名古屋城を「蓬左城」と位置付けている。これは、熱田神宮を「蓬莱宮」と位置付け、「蓬莱」つまり「人間社会におけるユートピア思想」を体現する意志の現れであると考えることはできなくもない。

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ところで、南山大学法学部は、「蓬莱郷」であってほしいとぼくは思っている。つまり、学生が満足な教育を受け、先生方が満足に研究に打ち込める環境にあり、そして学生と先生方がともに学徒(Students)として対等に生活できる環境こそがまさに「蓬莱郷」と呼ぶことのできる環境であるということができよう。『法友南山』は、2つ目のものを除けば、かなりの程度でそれを具現化している機関誌ではないかと考えるようになった。

委員長として、「ガキのような元気さ」だけが取柄のぼくにできることは、先人たちが築いてきた『法友南山』をより発展させることだ。しかしこれは難しい。そこで、10号前の『法友南山』を見せていただいたりして、この20号を刊行する歴史的な意義を見出そうと躍起になった。そして、いろいろと考えた結果、20号は21世紀最初の『法友南山』であり、最近新聞をにぎわせている「司法制度改革」を取り上げて、10年後の南山大学法学部生に、

「こんなことやってたんやぞ?」

ということをプレゼンテーションするとともに、南山大学法学部のカリキュラム改正のねらいを皆さんにぜひ知っていただきたいという趣旨のもとで編纂されたものである。これは、授業を受ける側も知っておくことで、来期の大学の授業の受け方の参考にしてもらいたいという意図もこめられている。したがって、例年の「先生紹介」が大部分を占める『法友南山』とは違った姿勢で、執筆・編集活動を行なうことにしたのである。

司法制度改革の最終報告は平成13年の6月に出ることになっている。ということは、具体的な内容まではまだ明らかになっていない。そのため、不確定情報もまだ多く、情報掲載には細心の注意を払った。そうでなければ、逆に『法友南山』はウソを伝える「最悪な機関誌」になり下がってしまう。編集委員会としては、分かっている、あるいは決定されている範囲内で、いろいろとお話を聞くことができた。

『法友南山』は、学生と先生方が「平等」にお話ができるスペースであり、これは1990年の初めに行なわれ始めた「サマーセミナー」と並んで、とても重要な役割を果たすものである。前述した「蓬左城」の例を利用すれば、『法友南山』は南山大学法学部が「蓬莱郷」であるための「道具」だと言えよう。であれば、ぼくは「徳川義直公」ということになるのだろうか(尾張殿、出すぎたまねをしてもうしわけございません)。しかしながら、義直公に負けないような情熱をもってぼくは編集活動に従事したつもりではある(実際どうかは別問題!)。

まぁ、こんな固いことばかりを言っていても何も始まらないので、そろそろ巻頭言を閉じたいと思うが、『法友南山』の役割をご理解していただいている先生方をはじめ、原稿の執筆に協力していただいた多くの方々に、そして毎年楽しんで読んでもらえる読者の皆さんに対して、この場を借りて感謝を申し上げたい。

『法友南山』目次

○「交流の輪と心の和」  法学部長

○「あゆち」              編集委員長 加代昌広

○先生の海外留学体験記

  • 「イギリス・ロンドンのこと」
  • 「遅れ馳せのオックスフォード」

○特集「ゼミナール委員会活動」          法友南山編集委員会

  • 第一編 「法曹界の蓬莱郷を目指すために…」
    • 第一部 司法制度改革審議会中間報告の考察
    • 第二部 21世紀の南山大学法学部(インタビュー&新任教員の紹介)
  • 第二編 「サマーセミナー報告」
    • 「あいのサマーセミナー日記」
    • 「企業再編のための法整備に関する考察」       黒田ゼミ法学演習1
    • 「訪問販売法」                            法律学研究会
    • 「戦後補償問題」                        岡田正則ゼミ法学演習1
    • 「犯罪被害者の法的地位」                長井ゼミ法学演習1

○1999年度 法学会懸賞論文 審査報告

○法学演習1 ゼミ紹介

○編集後記

『法友南山』20号 編集方針

今年の内容は、南山大学のロースクール構想っていうのが一番の核にあります。ロースクールについては現在司法制度改革審議会っていう政府の機関が一生懸命議論しているのですが、それを受けて南山大学はどのように対応しているのかっていうのは自然な感情だと思います。

それにぼくがこの企画のプロデュースをするにあたって注目したのは「20号」です。やっぱり節目の年なんです。人間、節目ってやっぱり大事だと思います。ということで、創刊号から最新号に至るまでのほぼ全ての過去の「法友南山」に目をとおしました。そうしたらすごかった。「天皇制」の意識調査を卒業生にまでアンケートを取ってまでやっていたこと、比較的編集委員に限らず一般の方の原稿執筆も多かったことは特に関心を持ちました。原稿募集中なんて広告もあったぐらい(笑)。段々時代を経るにしたがって、先生紹介などのエンターテインメント的な内容が増えています。今回だけは一度過去の趣に戻してみるかってことで、学生による「論文集」っていうような趣にしてみたのは、「原点回帰」っていうことなのです。

また、核になるコンテンツが「まさに2001年」のことを言っているわけですから、25号、30号と続くであろう「法友南山」の中の20号の位置付け、しかも法曹界が大きく変わろうとしているというご時世に、「ロースクール構想」というのがあったという事実はこれから南山大学法学部に入学するであろう後輩たちにもいい資料として残しておく必要があると考えました。それを表現したのがぼくの巻頭言の「あゆち」であり、「編集後記」でのぼくのコメントです。

ですから今年の法友南山はちょっと硬いなって感じるのはそういった理念の基に作られたものだからなのです。

来年度につなげたいこと

まず編集委員の学生が「特集のあとがき」に書いてくれたように、ロースクールの話は来年も続けて欲しいですね。その一方で、来年は再びエンターテインメント性の高いコンテンツの「法友南山」にしてほしいです。今年の「法友南山」が創刊号からの総括、未来へのメッセージというイメージで作りましたが、来年度は今後の「21世紀型法友南山」の指針を与えるようなものにしてもらいたいと思っています。あとは読者の存在、ニーズを忘れてはいけませんね。

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あとは、編集者の腕次第ってことでしょうね。僕の腕は決してよくないですからああいう堅い内容のものになってしまったんですけどね。正直、もう少し柔らかくてもよかったんじゃないかって思っています。

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