広島まほろば学習会主催「開戦・終戦の御詔勅を学ぶセミナー」(講師:松田雄一先生)に参加しました

平成27年(西暦2015年)12月20日に愛知県名古屋市愛知県護国神社近くの桜華会館で開催された広島まほろば学習会主催「開戦・終戦の御詔勅を学ぶセミナー」に参加してきました。

今回の「開戦・終戦の御詔勅を学ぶセミナー」は、素読教室の後に開催されたものです。ボクは素読教室の方にはスケジュールの都合が合わなくて参加できなかったので、セミナーの方のみに参加しました。

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我々は小学校の時から教科書を使って、教科書を中心に歴史を学んできました。しかし、教科書に書かれている内容は、たとえどこの会社の教科書であったとしても、史料などを解釈したものを分かりやすくまとめているものにすぎません。解釈は人によって異なるものであり、たとえ学習指導要領に学習項目が載っていたとしても、教科書の執筆者のさじ加減でいかようにも事実を編集できてしまうことに変わりはありません。しかし、史料をそのまま利用すれば文献を作った人の息遣いをそのまま学ぶことができます。史料を歴史学習のスタートにして、ここから学ぶことが大切なのだとボクは気づかされました。

ところが、今回の講演のテーマである大東亜戦争の「開戦・終戦のご詔勅」については実はあまり中学校や高等学校の教科書においても大きくページを割いておらず、当時の文献ではなく教科書の編集者や学校の先生の歴史の解釈をベースに学習がなされているのが実情です。これらの本の多くは、いわゆる「戦勝国」のアメリカなどの視点のみで歴史が語られるものがほとんどです。簡単な例を1つ出しましょう。日本が戦前において使われていた用語は「大東亜戦争」であったはずですが、占領下において「大東亜戦争」という用語は禁止され、代わって「太平洋戦争」という用語が用いられています。先の大戦では残念ながら負けてしまいましたが、戦勝国に言葉を奪われてそのままそれが教科書に載り続けていることは、先に述べたとおり「戦勝国」の理屈だけで歴史が語られる典型と言ってもよいでしょう。いまだに「大東亜戦争」と試験の答案で書いても正解にはならないでしょう。これが歴史教育の現状です。

そういった中で、「開戦・終戦のご詔勅」を原文で学習する機会というのは貴重な機会です。

セミナーは後述するような日本における歴史教育の問題点を挙げるところから始まり、最初に「詔勅(しょうちょく)」というものがどのようなものかについて解説されました。

詔勅を文書化したものを「詔書(しょうしょ)」といいます。改元(かいげん)の際には必ず詔書が必要でした。

さて、ここで「開戦の詔勅」を原文で見てみましょう。「開戦の詔勅」は「官報」で出されましたが、後ほど見る「終戦の詔勅」とは異なりラジオなどでの放送はされていません。

天佑ヲ保有シ万世一系ノ皇祚ヲ践メル大日本帝国天皇ハ昭ニ忠誠勇武ナル汝有衆ニ示ス

朕茲ニ米国及英国ニ対シテ戦ヲ宣ス朕カ陸海将兵ハ全力ヲ奮テ交戦ニ従事シ朕カ百僚有司ハ励精職務ヲ奉行シ朕カ衆庶ハ各々其ノ本分ヲ尽シ億兆一心国家ノ総力ヲ挙ケテ征戦ノ目的ヲ達成スルニ遺算ナカラムコトヲ期セヨ

抑々東亜ノ安定ヲ確保シ以テ世界ノ平和ニ寄与スルハ丕顕ナル皇祖考丕承ナル皇考ノ作述セル遠猷ニシテ朕カ拳々措カサル所而シテ列国トノ交誼ヲ篤クシ万邦共栄ノ楽ヲ偕ニスルハ之亦帝国カ常ニ国交ノ要義ト為ス所ナリ今ヤ不幸ニシテ米英両国ト釁端ヲ開クニ至ル洵ニ已ムヲ得サルモノアリ豈朕カ志ナラムヤ

中華民国政府曩ニ帝国ノ真意ヲ解セス濫ニ事ヲ構ヘテ東亜ノ平和ヲ攪乱シ遂ニ帝国ヲシテ干戈ヲ執ルニ至ラシメ茲ニ四年有余ヲ経タリ幸ニ国民政府更新スルアリ帝国ハ之ト善隣ノ誼ヲ結ヒ相提携スルニ至レルモ重慶ニ残存スル政権ハ米英ノ庇蔭ヲ恃ミテ兄弟尚未タ牆ニ相鬩クヲ悛メス

米英両国ハ残存政権ヲ支援シテ東亜ノ禍乱ヲ助長シ平和ノ美名ニ匿レテ東洋制覇ノ非望ヲ逞ウセムトス剰ヘ与国ヲ誘ヒ帝国ノ周辺ニ於テ武備ヲ増強シテ我ニ挑戦シ更ニ帝国ノ平和的通商ニ有ラユル妨害ヲ与ヘ遂ニ経済断交ヲ敢テシ帝国ノ生存ニ重大ナル脅威ヲ加フ

朕ハ政府ヲシテ事態ヲ平和ノ裡ニ回復セシメムトシ隠忍久シキニ弥リタルモ彼ハ毫モ交譲ノ精神ナク徒ニ時局ノ解決ヲ遷延セシメテ此ノ間却ツテ益々経済上軍事上ノ脅威ヲ増大シ以テ我ヲ屈従セシメムトス

斯ノ如クニシテ推移セムカ東亜安定ニ関スル帝国積年ノ努力ハ悉ク水泡ニ帰シ帝国ノ存立亦正ニ危殆ニ瀕セリ事既ニ此ニ至ル帝国ハ今ヤ自存自衛ノ為蹶然起ツテ一切ノ障礙ヲ破砕スルノ外ナキナリ

皇祖皇宗ノ神霊上ニ在リ朕ハ汝有衆ノ忠誠勇武ニ信倚シ祖宗ノ遺業ヲ恢弘シ速ニ禍根ヲ芟除シテ東亜永遠ノ平和ヲ確立シ以テ帝国ノ光栄ヲ保全セムコトヲ期ス

御 名 御 璽
昭和十六年十二月八日

続いて終戦の詔勅です。こちらは玉音がラジオを通して流されました。玉音が流されるということは、国の重大な危機であることを意味します。

朕深ク世界ノ大勢ト帝國ノ現状トニ鑑ミ非常ノ措置ヲ以テ時局ヲ收拾セムト欲シ茲ニ忠良ナル爾臣民ニ告ク
朕ハ帝國政府ヲシテ米英支蘇四國ニ對シ其ノ共同宣言ヲ受諾スル旨通告セシメタリ
抑ゝ帝國臣民ノ康寧ヲ圖リ萬邦共榮ノ樂ヲ偕ニスルハ皇祖皇宗ノ遺範ニシテ朕ノ拳々措カサル所曩ニ米英二國ニ宣戰セル所以モ亦實ニ帝國ノ自存ト東亞ノ安定トヲ庶幾スルニ出テ他國ノ主權ヲ排シ領土ヲ侵スカ如キハ固ヨリ朕カ志ニアラス然ルニ交戰已ニ四歳ヲ閲シ朕カ陸海將兵ノ勇戰朕カ百僚有司ノ勵精朕カ一億衆庶ノ奉公各ゝ最善ヲ盡セルニ拘ラス戰局必スシモ好轉セス世界ノ大勢亦我ニ利アラス加之敵ハ新ニ殘虐ナル爆彈ヲ使用シテ頻ニ無辜ヲ殺傷シ慘害ノ及フ所眞ニ測ルヘカラサルニ至ル而モ尚交戰ヲ繼續セムカ終ニ我カ民族ノ滅亡ヲ招來スルノミナラス延テ人類ノ文明ヲモ破却スヘシ斯ノ如クムハ朕何ヲ以テカ億兆ノ赤子ヲ保シ皇祖皇宗ノ神靈ニ謝セムヤ是レ朕カ帝國政府ヲシテ共同宣言ニ應セシムルニ至レル所以ナリ
朕ハ帝國ト共ニ終始東亞ノ解放ニ協力セル諸盟邦ニ對シ遺憾ノ意ヲ表セサルヲ得ス帝國臣民ニシテ戰陣ニ死シ職域ニ殉シ非命ニ斃レタル者及其ノ遺族ニ想ヲ致セハ五内爲ニ裂ク且戰傷ヲ負ヒ災禍ヲ蒙リ家業ヲ失ヒタル者ノ厚生ニ至リテハ朕ノ深ク軫念スル所ナリ惟フニ今後帝國ノ受クヘキ苦難ハ固ヨリ尋常ニアラス爾臣民ノ衷情モ朕善ク之ヲ知ル然レトモ朕ハ時運ノ趨ク所堪ヘ難キヲ堪ヘ忍ヒ難キヲ忍ヒ以テ萬世ノ爲ニ太平ヲ開カムト欲ス

朕ハ茲ニ國體ヲ護持シ得テ忠良ナル爾臣民ノ赤誠ニ信倚シ常ニ爾臣民ト共ニ在リ若シ夫レ情ノ激スル所濫ニ事端ヲ滋クシ或ハ同胞排擠互ニ時局ヲ亂リ爲ニ大道ヲ誤リ信義ヲ世界ニ失フカ如キハ朕最モ之ヲ戒ム宜シク擧國一家子孫相傳ヘ確ク神州ノ不滅ヲ信シ任重クシテ道遠キヲ念ヒ總力ヲ將來ノ建設ニ傾ケ道義ヲ篤クシ志操ヲ鞏クシ誓テ國體ノ精華ヲ發揚シ世界ノ進運ニ後レサラムコトヲ期スヘシ爾臣民其レ克ク朕カ意ヲ體セヨ

御名御璽

テレビの歴史番組などでは、「堪ヘ難キヲ堪ヘ忍ヒ難キヲ忍ヒ以テ萬世ノ爲ニ太平ヲ開カムト欲ス」という部分が一番引用されますが、謹んで詔書を通しで拝読すると、一番最後の段落にこそ陛下の御心を感じることができます。最後の段落だけ、現代語訳されたものを掲載します。

朕は今、国としての日本を護持することができ、忠良な汝ら国民のひたすらなる誠意に信拠し、常に汝ら国民と共にいる。もし感情の激するままみだりに事を起こし、あるいは同胞を陥れて互いに時局を乱し、ために大道を踏み誤り、世界に対し信義を失うことは、朕が最も戒めるところである。よろしく国を挙げて一家となり皆で子孫をつなぎ、固く神州日本の不滅を信じ、担う使命は重く進む道程の遠いことを覚悟し、総力を将来の建設に傾け、道義を大切に志操堅固にして、日本の光栄なる真髄を発揚し、世界の進歩発展に後れぬよう心に期すべし。汝ら国民よ、朕が真意をよく汲み全身全霊で受け止めよ。

http://ironna.jp/article/1855より

このセミナーはもともとは素読教室をベースとしたものなので、2つの詔書を松田先生とともに素読していきます。素読とは本来は書いてある文章についての意味をあまり考えずに声を発して身体に言葉をしみこませるところに意味があるのですが、今回は松田先生の解説を交えて意味内容を理解していきながらセミナーは進行します。

途中でポツダム宣言の原文も登場します。昭和天皇はどのような経緯をもって終戦の御詔勅を出されたのかを知るためです。ポツダム宣言は安易な解釈がなされることが多い代表的な史料の1つです。本来であれば英文そのままを自力で読むのがベストなのですが(松田先生もこのような趣旨のことは仰っていた)、セミナーでは全文を和訳したものを使用しました。

Proclamation Defining Terms for Japanese Surrender

 

Issued at Potsdam, July 26, 1945
  1. We—the President of the United States, the President of the National Government of the Republic of China, and the Prime Minister of Great Britain, representing the hundreds of millions of our countrymen, have conferred and agree that Japan shall be given an opportunity to end this war.
  2. The prodigious land, sea and air forces of the United States,  the British Empire and of China, many times reinforced  by their armies and air fleets from the west, are poised to strike the final blows upon Japan. This military power is sustained and inspired by the determination of all the Allied Nations to prosecute the war against Japan until she ceases to resist.
  3. The result of the futile and senseless German resistance to the might of the aroused free peoples of the world stands forth in awful clarity as an example to the people of Japan. The might that now converges on Japan is immeasurably greater than that which, when applied to the resisting Nazis, necessarily laid waste to the lands, the industry and the method of life of the whole German people. The full application of our military power, backed by our resolve, will mean the inevitable and complete destruction of the Japanese armed forces and just as inevitably the utter devastation of the Japanese homeland.
  4. The time has come for Japan to decide whether she will continue to be controlled by those self˗willed militaristic advisers whose unintelligent calculations have brought the Empire of Japan to the threshold of annihilation, or whether she will follow the path of reason.
  5. Following are our terms. We will not deviate from them. There are no alternatives. We shall brook no delay.
  6. There must be eliminated for all time the authority and influence of those who have deceived and misled the people of Japan into embarking on world conquest, for we insist that a new order of peace, security and justice will be impossible until irresponsible militarism is driven from the world.
  7. Until such a new order is established and until there is convincing proof that Japan’s war˗making power is destroyed, points in Japanese territory to be designated by the Allies shall be occupied to secure the achievement of the basic objectives we are here setting forth.
  8. The terms of the Cairo Declaration shall be carried out and Japanese sovereignty shall be limited to the islands of Honshu, Hokkaido, Kyushu, Shikoku and such minor islands as we determine.
  9. The Japanese military forces, after being completely disarmed, shall be permitted to return to their homes with the opportunity to lead peaceful and productive lives.
  10. We do not intend that the Japanese shall be enslaved as a race or destroyed as a nation, but stern justice shall be meted out to all war criminals, including those who have visited cruelties upon our prisoners. The Japanese Government shall remove all obstacles to the revival and strengthening of democratic tendencies among the Japanese people. Freedom of speech, of religion, and of thought, as well as respect for the fundamental human rights shall be established.
  11. Japan shall be permitted to maintain such industries as will sustain her economy and permit the exaction of just reparations in kind, but not those which would enable her to re˗arm for war. To this end, access to, as distinguished from control of, raw materials shall be permitted. Eventual Japanese participation in world trade relations shall be permitted.
  12. The occupying forces of the Allies shall be withdrawn from Japan as soon as these objectives have been accomplished and there has been established in accordance with the freely expressed will of the Japanese people a peacefully inclined and responsible government.
  13. We call upon the government of Japan to proclaim now the unconditional surrender of all Japanese armed forces, and to provide proper and adequate assurances of their good faith in such action. The alternative for Japan is prompt and utter destruction.

このセミナーでは、単に2つの詔書を素読し解説のみがなされたわけではありません。先にも述べたとおり、現在の歴史教育の問題点を松田先生は鋭く指摘されました。一例をご紹介すると、

  • 教科書が自国よりも外国の文献を優先して史料を採用している(例えば、卑弥呼は「日本書紀」などの日本の文献には出てこない)。
  • 歴史的事実を隠すために表記や解釈を変更する(例えば、仁徳天皇陵を大仙古墳と呼称する、鎌倉幕府の成立を1192年であったものを1185年と解釈するなど)。
  • 近現代史に見られる逆接の接続詞の多用

といったことをあげられます。

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松田先生の問題意識の高さとそれを受講者に噛み砕いて解説なさるスキルの高さ、どちらも満足のいくセミナーでございました。今回は本体の「素読教室」の方には参加できませんでしたので、次回は素読教室の方にも足を運んでみようと思いました。

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