法情報へのアクセス

 

最終更新日: 平成29年(西暦2017年)11月1日

条文集

日本では、「条文集」のことを一般的に「六法」と称している。「六法」の語源は、フランス法を翻訳した箕作麟祥(みつくり・りんしょう)が『仏蘭西法律書』(ふらんすほうりつしょ)(1874年)の中で、ナポレオン五法典(民法・刑法・商法・民事訴訟法・治罪法)を紹介したことが由来したもので、これに「憲法」を加えて、「六法」と呼ばれるようになったと言われています。つまり、日本国内で重要な法律のことを指す言葉でした。現在は6つの法律が含まれた「条文集」のことも指すようになり、さらには6つの法律のいずれかが欠けた「条文集」のことも「六法」と呼ぶようになりました。欧米とは異なり、日本では民事法も刑事法も商事法も、1冊の本の中に収録されているものが市場では多く流通しているのが特徴的です。

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小型六法

法律学の初学者から研究者まで幅広く使われている六法です。出版社によって収録されている法令数は若干異なりますが、概ね200前後の法令が収録されています。内容は、上記で述べた「6つの法律」はもちろん、これらの法律に関連した主たる特別法(例えば、「民法」の特別法である「借地借家法」)や政・省令及び規則(例えば、「会社法」が関連する政省令といえる「会社計算規則」など)なども収録されています。したがって、憲法の講義も民法の講義も刑法の講義も、このタイプの六法を1冊持っていさえすれば、この1冊だけ持っていればカバーできます。

小型の六法は、内容現在が9月1日であるものが多いです。日本の国会の「常会」が1月から始まり6月末から7月末に終わるため、概ね常会終了直後の最新の情報を掲載した法令が収録されます。

ここで、国会の開会時期及び閉会時期についての条文を掲げておきます。

常会の開会時期について

<国会法第2条>

「常会は、毎年一月中に召集するのを常例とする。


閉会時期について

<国会法第10条>

常会の会期は、百五十日間とする。但し、会期中に議員の任期が満限に達する場合には、その満限の日をもつて、会期は終了するものとする。

発売時期は、9月下旬から10月上旬頃です。

また、六法には「出版社宛」と印字された葉書が挟み込まれています。これは、挟み込まれている葉書を一定の期間内に出版社に対して送る(無料)と、六法が出版された後に改正があった箇所について記された冊子が、追録(ついろく)として出版社から送られるというサービスを複数の出版社が行っています。

また、小型六法には別冊の付録が挟み込まれています。これには、例えば不動産登記簿の雛形や起訴状の様式や司法統計資料など携帯資料集として利用することができます。

このように、小型ではありながら多くの分野の条文が収録されているので、前述したとおり、法律学の初学者だけでなく研究者や法律実務家などもよく利用します。

ここで、代表的な小型六法をあげておきたいと思います。

出版社によって多少異なりますが、概ねページ数は2000ページ前後で、定価は税込みで2000円弱です。

大型六法

「大型六法」は1000個弱の収録数を誇ります。このサイズの六法を持ち歩いて利用する人は「小型六法」よりは少なく、研究室や事務所や自宅または図書館などに置いて利用するのが一般的です。

「大型六法」には判例が収録されていませんが、かなり広い分野の法令を守備範囲としています。このタイプの六法を指して、特に「六法全書」と呼ぶことがありますが、もちろん「法令」の「全部」が収録されているわけではありません。

判例六法

「六法」の中には、条文の後にそれに関連した判例が付いているものがあります。これを、一般的に「判例六法」と呼んでいます。「判例六法」には「小型六法」と「中型六法」の2種類のものがあります。

「小型判例六法」の収録法令数は、「小型六法」の収録数よりもやや少ない150個程度です。なお、条文の後に付いている判例は、専門家の監修を受けて出版社がセレクトしているものです。発売時期は、概ね10月末から11月頃で、定価は3000円ぐらいです。

「中型判例六法」には、400弱の法令及び13000程度の判例が収録されています。概ね11月から12月頃で、低下は5000円ぐらいです。

「六法」を出版する会社は、「装丁(そうてい)」や「字の色」や「レイアウト」や「掲載法令数」といった形式面はもちろんですが、前述した関連条文や関連判例は出版社の編集者が掲載内容を決定しているので、法律学習に熟達している人は編集者のセンスを見極めて利用する六法を決めていることもあります。

特定の分野に特化した六法

これまで紹介してきた「六法」は、法分野が特化しておらず網羅的に法令を収録しているものでしたが、ある特定の分野に特化した「六法」というものも存在します。

例えば、地方公務員がいる都道府県庁や市町村役場の役人の机の上には「自治六法」と呼ばれる行政法や地方自治関係の法令や判例及び先例を収録した六法が存在しますし、小学校・中学校及び高等学校では、教育行政や学校管理に関する法令等が収録された「教育六法」という六法が存在します。以下、一部ではあるが、具体例を示したいと思います。

このタイプの「六法」は、先に述べた「6つの法律」の全てが収録されていない「六法」の典型例です。つまり、「六法」という言葉が、「6つの法律」の意味から派生して「法令集」の意味合いで使われている典型例であると言い換えることもできます。

差し替え式(ルーズリーフ形式)の六法(加除式六法)

これまでまで紹介してきた「六法」は、いずれも本の「のど」に糊が付けられた「単行本」です。一方、「差し替え式」の六法は、たとえ法令の一部が改正されても、改訂されたページのみを利用者が差し替えて使用するものです。差し替えの料金は定額のものもありますが、差し替えられる量(ページ数)に応じて料金が加算されるものが一般的です。

このタイプの六法は、多くは自治体や図書館や法律事務所や会計事務所が保有することが多く、値段もかなり高いです。なぜならば、「差し替え式の六法」の多くは実務家が利用するものであり、かつ専門的なものだからです。例えば、法務省が編纂している「現行日本法規」という六法は、全97巻130冊にも及ぶものであり、台本(表紙+中身)を購入するだけでも250,000円ほどかかります。さらに、法律が改正される度に差し替え料金が最初のバインダー代ぐらいかかります。これを見ても、とても個人で保有できるものではないことが推察できると思います。

「差し替え式」の六法は、地方公共団体が制定できる「条例(じょうれい)」や「規則(きそく)」をまとめた「例規集」として使われる例もあります。「例規(れいき)」(「条例」と「規則」の総称)が、役所内のイントラネットのグループウェアで閲覧できるシステムが構築される前は、差し替え式の「例規集」が主力で、製本された本が役所内に数多く置かれていました。「例規集」は、地方議会や首長によって制定された例規をまとめ、出版社が改正され条文があるページを「差し替え」て、地方公共団体にそれを納品します。出版社は、国の政府と連絡を取り合って国の法令の改正によって影響を受ける(改正しなければならなくなった)「例規」を知らせたり、他の地方公共団体の先進事例を紹介したりして、地方公共団体の例規の担当者の仕事をサポートする仕事も担っています。

近年は、役所内のイントラネットが整備され、「例規集」が庁内でイントラネットで閲覧できるようになり、製本された「例規集」を数多く保有する必要性はなくなっています。また、人口減少などの影響で地方公共団体の税収が減り、ランニングコストのかかる「差し替え式」六法の数を廃止する傾向にあるのが現状です。さらに言えば、役所内で役所の職員自身が容易に「例規」を起案及び管理することができるアプリケーション・システムを開発した出版社もあるので、「差し替え式」例規集の数は減少の一途をたどっているのが現状です。

判例集

刊行されている「判例集」で最も著名なものは、最高裁判所判例委員会が編纂した「最高裁判所判例集」である。最高裁判所判例委員会が重要な判例として選んだものが掲載されるもので、毎月1回、白地のソフトカバーで発行されているものです。「最高裁判所判例集」は、中を見ると「民事」と「刑事」の2部に分かれており、前者の判例集のことを「最高裁判所民事判例集」(通称「民集」と呼ばれている)、後者の判例集のことを「最高裁判所刑事判例集」(通称「刑集」と呼ばれている)と言います。多くの図書館では、「民集」と「刑集」は分けて製本して使用されるケースが多い。

また、法律学研究者や実務家は法律雑誌から判例情報を取得することが多いです。労働事件、商法・金融法分野、税法分野などに特化した判例雑誌も数多く存在しますが、全分野・全審級を対象とした雑誌も存在します。前述した最高裁判所から出版される判例集が収録までに判決日から半年から1年ぐらいかかるのに対し、これらの法律雑誌は3ヶ月ぐらいで掲載されるため速報性がある点において優れたツールであると言えます。また、これらの雑誌は主文や理由の前に、判例の概説・解説・コメントを掲載しているため、初学者にとっても有用です。代表的なものに、「判例時報」(法律学論文において引用する場合は「判時」と略される)や「判例タイムズ」(「判タ」と略される)などが代表的です。

デジタル媒体の法情報

最後に、日本国内におけるデジタル媒体の「六法」や「判例情報」についての変遷を解説しておきたいと思います。

言うに及ばず、デジタル情報は紙情報と比較して、特に目的とする法情報へのアクセスが飛躍的に速くなっている点(検索性の向上)及び情報を複写できる点で優れています。デジタル情報の発展は、法律に携わる者の全てのライフスタイルを劇的に変えたといっても過言ではないと思います。

日本では、当初は出版社が何十枚にも及ぶCD-ROMを図書館などに納品し、それをコンピューターにダウンロードして判例検索や法令検索を行うサービスが行われていました。そして、新規判例の追加や法令改廃の更新は、出版社の営業マンやエンジニアが顧客のところに赴き、その作業を行っていました。その後、デジタル媒体はCD-ROMからDVDに変化し、より多くの情報を顧客に納品することに成功しました。また、DVDの出現は、過去の雑誌論文をデジタルアーカイブ化し、膨大な過去の雑誌論文の情報に素早くアクセスできる(検索できる)環境を構築することに大きく寄与しました。

近年は出版社の自社サーバーに法情報を蓄積し、自社内で情報の更新を行うASP (Application Service Provider)化が進んでいます。つまり、顧客にはIDとパスワードが出版社から配布され、これらをインターネットのブラウザーに入力し、ログインすることで利用できます。DVDなどと比較しても、媒体や人件費に対する料金が減るので利用料は比較的安価です。また、サービスは多様化し、法令の改正の履歴を追うことができる機能や雑誌論文とのリンクも図られるなど、そのサービスは日進月歩で向上しています。

なお、ASP化の欠点としては、データを一元的に管理する結果、サーバーに何らかの異常が生じた場合にデータのバックアップ体制が不十分であると情報にアクセスできなくなってしまうケースがあります。平成23年(西暦2011年)3月に東北地方・関東地方を中心に大きな被害を受けた地震が原因でサーバーが停電して法情報にアクセスできない事態に陥り、地震による被害のなかった九州地方の役場でその役場の「例規集」がネットで見られないといったようなことが起きていたそうです。緊急事態におけるサーバー管理は大きな課題といえるでしょう。

また、ASP化されたものではなく、USBを利用した安価な商品も開発されています。

官報

「官報」は、国立印刷局 (National Printing Bureau: http://www.npb.go.jp/en/index.html)が発行する国の機関が定めた法令を公布・公告するための新聞で、32ページで構成されています。32ページを超える場合、「官報号外」と題して発行されます。原則として、行政機関の休日を除いて毎日発行されるもので、法令を最も早く正確に知るツールです。

具体的には、①法令の公布 ②広報的事項(人事異動や国会の議事日程など) ③公告紙的事項(各省庁の入札公告、破産公告、会社の合併や決算の公告など)が掲載されています。

インターネットにおいても閲覧することができますが、「官報としての周知事項を速やかに利用者へ周知し、官報の補完的役割を果たすものとして、30日間分の官報」しか配信されていないのが現状です。それ以前の官報は、次のような条件でしか見ることができません。「官報」のインターネット版ウェブサイトからの引用です。

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官報を定期購読していない人は、探したい記事の「日付」を検索するだけでも「有料」だということが上の表から分かっていただけると思います。さらに、官報を定期購読している人であっても、月額504円かかります。この有料サービスがカバーしている範囲は、昭和22年(西暦1947年)5月3日(現行の日本国憲法施行日)以降から当日までです。閲覧できるデータのファイル形式は、昭和22年(西暦1947年)5月3日から平成11年(西暦1999年)3月31日までのデータはJPEG形式で、平成11年(西暦1999年)4月1日から現在はPDF形式での閲覧が可能です。

官報は、法令データサービスでは省略されることのある様式(テンプレート)、表、別表などもダウンロードできる点で大きなメリットがありますが、「有料」であるという点は少々厄介なシステムであるとも言えます。

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