カスティーリャ・イ・ラ・マンチャ自治州ウィークのレポート

5月23日から29日にかけて、スペイン・パビリオンでは、「カスティーリャ・イ・ラ・マンチャ自治州」の自治州ウィークが行われていました。しかし、この週は所要があって、万博会場に足を運ぶことができませんでした。

カスティーリャ・イ・ラ・マンチャ自治州

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しかしながら、この自治州ウィークの期間中に、名古屋で公演中であった松本幸四郎主演の舞台「ラ・マンチャの男」のロングランを記念して、「カスティーリャ・イ・ラ・マンチャ自治州」の首相が松本幸四郎を表彰したということが東海地方の地元紙では大きく報道されていましたので、そのことについての記述のほかに、ラ・マンチャ地方のお話を少しだけ書こうと思い、万博会場には行ってはいないものの、レポートを書くことにしました。

スペインのラ・マンチャ州が松本幸四郎さんに栄誉賞

名古屋市中村区の名鉄ホールでミュージカル「ラ・マンチャの男」に出演中の松本幸四郎さん(62)に5月18日、スペイン中部のカスティーリャ・ラ・マンチャ州のホセ・マリア・バレダ・フォンテス首相から、「カスティーリャ・ラ・マンチャ栄誉賞」が授与された。

幸四郎さんは1969年から「ラ・マンチャの男」でドン・キホーテ役を演じており、6月の東京・帝国劇場千秋楽で、ミュージカルの通算出演回数が2000回を迎えるのを記念して贈られた。

フォンテス首相は「ラ・マンチャ州をPRしてくれて感謝しています。これからも長くドン・キホーテを続けてください」と話した。

YOMIURI ONLINE (2005/05/18(水)の記事より)

「ラ・マンチャの男」といえば、スペインが誇る小説家であるセルバンテスが書いた世界最高傑作の1つと言われている「ドン・キホーテ」についてのミュージカルですが、「ドン・キホーテ」の舞台になったのが、「カスティーリャ・イ・ラ・マンチャ自治州」です。

「カスティーリャ・イ・ラ・マンチャ自治州」の州都は古都のトレド。中世ヨーロッパにあるような典型的な城壁都市です。ぼくもスペイン旅行をした時に訪れたことがありますが、とにかく道が入り組んでいて複雑です。トレドは、西暦560年にゲルマン系の民族である「西ゴート族」が中心となって建国された「西ゴート王国」の首都となりました。589年の宗教会議で国教をカトリックとすることで決定されて以来、トレドは宗教会議場となるとともに、スペイン・カトリックの大司教座が置かれることとなりました。711年に北アフリカからイベリア半島にやってきたイスラム教徒によって「西ゴート王国」が滅ぼされた後は、異文化と信仰の自由に寛容であったイスラム教徒がトレドを支配しました。この間にイスラムの文化と既存の文化が融合し、「アラブ化された人々」という意味を持つ「ムデハル」と呼ばれる人々がイスラム建築の特徴でもある馬蹄形のアーチやアラベスク模様(アラビア風の唐草模様)と幾何学模様を取り入れた独自の「ムデハル様式」と呼ばれる建物が建つようになっていきます。トレドは文化の多様性を認めた都市だったのです。

トレドの街並み

しかし、キリスト教とイスラム教とユダヤ教が共存していたという歴史は、今日「文化の多様性」を重んじるようになって、再び注目されています。

「ラ・マンチャ」とは、スペイン語で「乾いた大地」のことを意味し、赤茶けた大地に雨の少ない土地のしか育たないぶどうやオリーブが栽培されている荒涼たる平原で、ワインの生産がやはり有名です。また、先ほどから何度も書いている通り、「ドン・キ・ホーテ」の作者であるセルバンテスの所縁の地でもあり、プエルト・ラピセ (Puerto Lapice)には、セルバンテスが何度も泊まったといわれる旅籠もあるぐらいです。

万博会場内で行われた自治州ウィークでは、

  • カスティーリャ・ラ・マンチャの手工芸紹介としてレース職人と陶芸家によるデモンストレーション
  • カスティーリャ・ラ・マンチャ製品のテイスティング(イベリコハム)及びワイン醸造専門家による実演
  • 5月18日には、La Recua(ラ・レクア)劇団による「ドン・キホーテ」の公演

が行われていたそうです。特に注目すべきなのは、1番目の「カスティーリャ・ラ・マンチャの手工芸紹介としてレース職人と陶芸家によるデモンストレーション」です。厳密には、「レース職人」と「陶芸家」によるデモンストレーションは分けて考える必要があります。前者の「レース」は、カスティーリャ・イ・ラ・マンチャ自治州のアルマグロの特産品。デモンストレーションは、「2人の女性が模様の書かれた型紙に数十本のまち針を刺し、木のおもりを付けた絹や綿の糸を針に引っかけるように巧みに動かして、複雑な図柄を刺繍していた」(中日新聞記事)そうです。後者の「陶芸家」によるデモンストレーションは、カスティーリャ・イ・ラ・マンチャ自治州のタラベラ・デ・ラ・レイナに16世紀の手法が伝わるつぼやタイル画のデモンストレーション。「館内では男性の職人がタイル画の下絵として、素焼きのタイルにカスティーリャ・イ・ラ・マンチャ自治州を舞台にした古典「ドン・キホーテ」の場面を筆でていねいに描いていた。完成まで最低3日はかかる」(中日新聞記事)そうです。タイルはもともとはイスラーム文化圏で生まれた文化です。8世紀から15世紀までイスラームに占領されていた頃にイベリア半島に根をおろした文化で、近世ヨーロッパ陶器の発祥地とも言われているようです。現在は、スペインの植民地政策により領土が拡大した頃に中南米にもタラベラ焼きが伝わったといいます。要するに、貴重な焼き物だというわけです。なお、タラベラ・デ・ラ・レイナの話については、中山瞭さんの「スペイン7つの小さな旅」(東京書籍)に詳しく載っています。

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いずれにせよ、「カスティーリャ・イ・ラ・マンチャ自治州ウィーク」に行けなかったのは残念です。

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