2002.02.13-14 帰国

翌朝は午前5時30分に目を覚ました。いや、目を覚まさざるを得なかった。午前9時15分のヒースロー空港行きのBA477便に乗らなければならなかったからだ。「国際線は2時間前ぐらいには空港にいて出国手続をしなければならない」という鉄則を考えれば、最低午前7時15分ぐらいには空港内にいなければならない。それを逆算していけば、だいたい午前7時00分ぐらいには空港にいなければならず、ホテルを出なければならない時間はだいたい午前6時40分ぐらいということになる。

ぼくたちがホテルを出たときは、まだ日が昇っていなかった。人はまだあまり出歩いていない。昨日のグラシア通りの様子とは全く違っていた。午前7時15分にはすでにはエル・プラット空港 (Aeropuerto de Barcelona El Prat)着いていた。

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空港に着いてから出国手続までは少し時間があったので、ぼくはホテルから支給された朝食を頬張った。メニューはパンだ。しかしこれがマズイ…。昨日まで食べていた食事とは違う。パンは妙にパサパサしている。給食のパンのまずさ並みだろうと思う。パンが一気に嫌な現実の世界に引き戻されることを暗示しているかのようだ。

この後、出国手続を済ませた。日本に帰らなければならないことを考えると億劫になってくる。できれば、もう3年ぐらいここにいたいと思った。10年前ぐらいに初めてアメリカに行った時には現地で早く帰りたいとちょこっとは思ったが、今回はそんな気持ちは全くなかった。スペインに持っていったスペイン語のテキストがあまりよくなかったので、それを交換しに日本に帰りたいとは思った。しかしそれはあくまで「交換しに」行くだけであって、交換したらまたこの地に戻ってきたいと思った。友達だったらこっちで会えばいいのだから、別に寂しいということはない。彼らに対しては最高のスペイン旅行をプレゼントできることを約束できる。

ぼくは、「何かしらの運」を、自らの手で葬り去ろうとしてしているのではないかと不安に掻き立てられた。

スペイン語が勉強できる環境…
サッカーを楽しめる環境…
ぼくの知的好奇心を満たしてくれそうな本や社会構造…
心を豊かにしてくれる芸術…

それがぼくのスペインという国に対して持つイメージだ。あたかも宝物を目前にしてどうしても引き返さなければならない探検家のような気分だ。

この国にもたくさんの問題はある。

ETAによる無差別テロ
ジブラルタルやモロッコなどの領土問題
移民問題
EUとの関係
などなどの数多くの難問…

数え切れない問題をこの国も抱えている。そんなことは分かっている。日本という現実の世界から単に逃れたくてスペインで生活したいというわけではないのだ。ぼくは日本以外のところから、しかも決してメジャーでは決してないところから、日本という国を見てみたい。と同時に、愛してしまったスペインという国が抱える問題を日本人の視点から考えてみたい。何かしら日本とスペインの橋渡しのような存在にでもぼく個人がなれれば…。そんな想いだ。

いずれにせよ、もっともっと勉強しなければならない、両国で。


街の雪が融け始めていた…らしい…。ぼくがスペインで貴重な経験をしていた頃、名古屋近辺は大雪だったらしい。この街にあった太陽を清麿とぼくが丸ごとスペインに持っていってしまったかの如く、訪西していた間はひどかったらしい。帰国した日の名古屋は快晴だった。そして温かかった。ぼくはJR名古屋駅近くにある外資系レコード店のHMVに来ていた、スーツケースを持ったまま…。店のウィンドウの外には新幹線が見える。

(これに乗って帰ってきたんだ…。)

ツアで知り合った友蔵は別れを告げぬままスペインで別れた。今ごろイタリアを楽しんでいるに違いない。仲良くなった添乗員さんとも成田空港で別れた。そしてさっきまで一緒にいた清麿とも別れていた。700系「のぞみ」を見ながら、終着駅にたどり着いたことを実感した。

ぼくはまず店の地下フロアにある洋楽CD売り場に行った。スペインで大流行していたOPERACION TRINFOというオーディション番組が企画したCDはもうここには1つもない…。グラナダのエル・コルテ・イングレスのCD売り場の視聴コーナーにいたようなノリノリでCD視聴しているようなオッチャンの姿ももうない…。

ぼくは再び1階の邦楽コーナーに立ち寄った。ちょうど日本を発った時に、ぼくの好きなglobeが新アルバム「Lights」をリリースしていた。今日は2月14日だ。店頭にも並べられていた。同時発売されたマキシシングル「Many Classic Moments」も横に並んでいた。ぼくは2枚のCDを購入した。

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ぼくは店の外に出た。冬の穏やかな陽射しが全身に降りかかってきた。ぼくは名古屋の街の中に「一歩」を踏み出した。今年は、クリストバル・コロン (コロンブス) が黄金の国ジパングやインドを目指して510年目の年。彼が西インド諸島にたどり着いてから510年後、ジパングからスペインへ向けてのぼくの航海はこうして始まった…。

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